花王の環境経営戦略を説明する尾崎元規・代表取締役社長執行役員。<br>手前の新しいロゴは、従来の漢字ではなくアルファベットの「kao」をあしらったもの
花王の環境経営戦略を説明する尾崎元規・代表取締役社長執行役員。
手前の新しいロゴは、従来の漢字ではなくアルファベットの「kao」をあしらったもの
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 花王は2009年6月17日に記者会見を開き、新しいロゴマークを含むCI(コーポレートアイデンティティー=企業イメージの統一)と環境経営戦略を発表した。同時に、新戦略実現のために花王独自の全社業務革新活動「TCR(トータル・コスト・リダクション)」を進化させることを明らかにした。

 花王は今回発表した「環境宣言」で2020年までの中期目標として、国内の消費者向け製品の製造や物流、消費など全ライフサイクルにかかわるCO2排出量を35%削減(2005年基準、売上高原単位=単位売上高当たりの排出量)するという数値目標を掲げた。尾崎元規・代表取締役社長執行役員は「環境を優先すれば、開発などのコストは増える。その分を消費者に負担していただくのではなく、長年続けてきたTCRと海外市場における成長によって吸収する」と話した。

 TCRは花王が1986年に始め、既に20年以上続いている。毎年60億~100億円のコスト削減効果を出しており、同社の原価低減に貢献してきた。2007年からはTCRの呼称を「トータル・チェーン・レボリューション-i」と改め、「消費者起点」と「全体最適」の視点をより重視するようになった。

 尾崎社長はTCRの枠組みを生かして取引先も巻き込んだ改善活動を継続し、コスト削減と環境負荷軽減を両立させる考えを強調した。「CO2の35%削減という大きな目標達成には、環境負荷の低いものづくり・製品設計が不可欠だが、それだけでは難しい。小売りさんや消費者と一緒に取り組むことが必要になる」(尾崎社長)。

 従来のTCRでは利益確保に直結するコスト削減を重視してきたが、今後はTCRのコスト削減効果を環境対策の原資とする方針を示した。TCRによる業務の見直しそのものを環境負荷の抑制につなげることも検討していく。

 花王は35%という目標を立てるに当たって、製品設計そのものの改良による削減効果だけではなく、製品分野ごとに取引先と共同で取り組むべき改善施策の効果などを細かく見積もって計算している。例えば、花王が取り扱う日用品を小売業の発注に応じて多頻度で配送する従来のやり方を改めることなどが念頭にある。売れ行きが好調な商品については、店頭の棚のフェース取りを1列から2列に増やしてもらって十分な店頭在庫を確保し、配送頻度を減らすといった内容を積極的に提案していく方針だ。

 花王は、2011年2月の完成を目指して、和歌山市に環境技術の研究開発拠点として「エコテクノロジーリサーチセンター」を新設することも発表している。設備投資額は約160億円を見込む。