コープとうきょう、ちばコープ、さいたまコープなど関東近郊1都7県の8つの生活協同組合(生協)で構成する生活協同組合連合会コープネット事業連合(さいたま市)は、2008年1月に発生した中国産冷凍餃子事件の反省から、品質管理体制の強化を進めている。商品や物流、店舗・宅配事業など、6つの視点からより精度の高い品質管理を実現する施策を打ち出し、消費者の信頼回復に努める。

 コープネット事業連合は8生協のチェーン本部機能を果たす組織だ。共同仕入れや、情報システムや物流センターの共用などによって、スケールメリットを生かしてコスト低減などを目指す。2008年1月の中国産冷凍餃子事件では、構成組織の1つであるちばコープで商品を購入した顧客(組合員)が、重篤な健康被害を受けた。再発防止のための品質保証の強化策を推進している。品質管理本部など、本部機構での取引先や商品のチェック強化に加え、物流センターや各生協の店舗での品質管理施策や、トラブル対応手順を標準化し、徹底に努める。2009年5月に「食品安全・品質保証ハンドブック」を策定して品質保証教育体系も確立した。

 冷凍餃子事件は人為的な毒物混入によって引き起こされた疑いもあるため、食品防御(フードディフェンス)の観点から、セキュリティーを強化する。店舗や物流センターへの第三者の侵入を防ぐため、防犯カメラの設置を推進している。物流センターには160台の監視カメラを設置し、各生協店舗の夜間納品口への追加設置も進めている。組合員の自宅に商品を配送する際には、宅配車両からドライバーが離れる時に自動的に施錠されるような改造を徐々に進めるほか、組合員の不在時に配送した商品にかけておくセーフティーカバーも施錠できるタイプに変更していく。

 異物混入防止を徹底するため、畜産加工用のスライサーの始業前点検を毎日2回実施し、刃が破損して商品に混入していないかをチェックし始めた。店舗で防虫などに使う薬剤の種類や保管場所の統一基準を設定したり、殺菌に使用する薬剤の濃度点検を行ったりすることで、薬剤の混入を防ぐ。

 原料や商品の日付け点検や、温度管理も強化している。店舗で調理するサンドイッチや寿司、パンなどの商品については、製造機器の点検や商品、原料の保管のワークフローを標準化した。機器故障時の作業手順や管理監督者への報告手順を明文化して、製造プロセスでの安全性を担保する。

 異常のある商品が出ても、顧客の手に渡る前に発見できるよう、物流センターでの検品体制も強化。入荷検品時と宅配用に商品を仕分けした時点で商品を点検し、異常を発見した場合、作業者からセンターの管理職を経由して、コープネット事業連合の品質管理部門まで情報を上げる伝達フローも明確にした。「現場で危機を察知したら、組織全体で迅速に対応できる体制を整え、被害が出る前に食い止められるようにしていく」と品質保証本部の太田憲治本部長代理は話す。