福岡市を地盤に鉄道・バス路線を運営する西日本鉄道が、2009年1~2月、韓国人旅行客の携帯電話に観光情報を表示する実証実験を実施した成果を明らかにした。

 この実証実験は経済産業省が推進する「情報大航海プロジェクト」の一環で、実験名は「ぷらっとPlat@福岡」。携帯電話を持っている韓国人旅行客を対象に、位置情報に応じた観光スポットや店舗などの情報を提供し、福岡市内をより巡ってもらおうというもの。モニターを募集して、22人の韓国人にサービスを提供した。

西日本鉄道が位置を識別するためにバス停に張った2次元バーコード。<br>韓国の携帯電話で読み取れる仕様のバーコードが使われている
西日本鉄道が位置を識別するためにバス停に張った2次元バーコード。<br>韓国の携帯電話で読み取れる仕様のバーコードが使われている
西日本鉄道が位置を識別するためにバス停に張った2次元バーコード。
韓国の携帯電話で読み取れる仕様のバーコードが使われている
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 西日本鉄道の福岡市中心部のバス停32カ所に、日本方式とは異なる、韓国方式の携帯電話で読み取れる仕様の2次元バーコードを掲示。韓国人旅行客が手持ちの携帯電話でこれを読み取ると、所在地をバーコードから読み取ったうえで専用の情報サイトにアクセスし、周辺の地図や店舗、時刻表などの情報を韓国語で表示できるようにした。

 実験後のアンケートではモニターの過半数が当初計画にない「予定外の行動を取った」と回答し、市内での回遊性を高める効果を確認できた。西日本鉄道によれば、成功要因は2つある。1つ目は、バスの時刻表を携帯電話画面で分かりやすく表示したことだ。土地勘のない旅行客にとってバスの系統は複雑で、バス停の時刻表などを見ても一目では理解しにくい。携帯電話で、現在地のバス停から目的地に向かうバスの時刻表やガイドを表示することでバス利用を促すことができたという。

 2つ目の要因は、海外で発行されているガイドブックなどには載っていない“穴場”を携帯電話で紹介したことだ。「キャナルシティ博多など主要観光スポットの情報だけではなく、外国人の関心が高い100円ショップや牛丼店などの店舗の情報もよく閲覧された」(西日本鉄道事業創造本部新規事業室の三ヶ島学・係長)

 西日本鉄道にとって、地理的に近い韓国人旅行客の誘致は課題の1つ。特に、市内のバス利用活性化のために、個人旅行客の回遊性を高める新サービスを練っている。団体旅行客は、大型観光バスで福岡市を通過して大分県の別府温泉などへ流れてしまうため、個人旅行客を念頭に置いているという。

 ただし、今回の実証実験の仕組みを事業化するには、通信料金が課題だ。韓国人が日本に持ち込んだ携帯電話で情報サイトにアクセスすると、国際通信料金がかかってしまうからだ。通信料金優遇の仕組みや、WiFi(無線LAN)など安価な無線通信手段の普及が事業化の前提になるという。