写真●ミニット・アジア・パシフィックの山口康寿代表取締役社長
写真●ミニット・アジア・パシフィックの山口康寿代表取締役社長
[画像のクリックで拡大表示]

 「ミスターミニット」ブランドで知られる靴修理サービス大手のミニット・アジア・パシフィック(川崎市)は、社員の独立を支援する「のれん分け制度」を導入する。宮崎市にある百貨店の山形屋の中に、同制度を活用した1号店を2009年6月下旬に出店する計画である。4月末時点でミスターミニット店の総数は273店。2009年3月期は売上高が約68億円、営業利益が約3億円だった。「のれん分け制度などを活用し、2015年3月期に400店体制を築く」と山口康寿代表取締役社長は語る。
 
 宮崎市に出店する1号店は、ミスターミニットでの勤務歴が20年以上になるベテラン社員が経営する予定だ。この社員は宮崎出身者で、出身地に戻りたい要望があったという。一方、会社側には「宮崎市にも靴修理のニーズはあるが、当社が設定する採算ラインに乗らず、直営では出店しづらい」(山口社長)という事情があった。同社は原則として年商2000万円以上を見込める場所だけに新規出店し、既存店を含めてドミナント化(一定地域への集中出店)することを出店戦略の柱としている。
 
 ミニット・アジア・パシフィックの社員は単体で500人強だが、本社スタッフはわずか数十人。残りの大半は全国各地のミスターミニット店に勤務する。営業部長や地域ごとに複数店を管理するディストリクトマネージャー、修理技術を伝承する研修トレーナーなどにならなければ、店舗で顧客とじかに接する靴修理職人として働き続ける社員が多い。のれん分け制度は、雇用延長や出身地へのUターンを望む社員の利用を見込んだものである。
 
 実は、同社は1993年に600店超で出店数のピークを迎えたが、靴修理の需要が高くない場所にまで出店してしまった。その後、不採算店を次々と閉鎖したものの、90年代後半まで業績が悪化し続けた苦い経験がある。採算ラインに乗らない店舗の多くは地方のスーパーの中にあるものが多かった。こうした状況下で、99年にヘッドハントされて就任した山口社長が年商2000万円という線引きをし、既存店の閉鎖だけでなく、都心の駅周辺への超小型店の集中出店などを実施したところ、2002年ころから業績が好転した。
 
 同社は2015年3月期までに、のれん分け店を80店に拡大したい考えだ。さらに、今後はフランチャイズ店も出店する。フランチャイズ店は2009年中に1号店を出店し、2015年3月期までに65店まで拡大する意向である。フランチャイズ店ものれん分け店と同様に、地方の中小規模商圏を中心に出店していく。