写真1●「星のや京都」について説明する星野リゾートの星野佳路代表取締役社長
写真1●「星のや京都」について説明する星野リゾートの星野佳路代表取締役社長
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 星野リゾート(長野県軽井沢町)は5月25日、京都・嵐山に新設する高級旅館「星のや京都」(12月開業予定)の説明会を開き、マーケティング戦略を明らかにした。同日に専用のウェブサイトを開設し、予約受付を始めた。

 星野リゾートは全国15カ所でスキーリゾートや温泉旅館を運営している。星野佳路代表取締役社長は、「(本拠地の)軽井沢で試行錯誤してきた旅館運営のノウハウすべてを、星のや京都に引き継ぐ。特に大事なノウハウはリピーター獲得策だ」と強調した。

 2005年7月に開業した「星のや軽井沢」では、閑散期にやみくもに宿泊料金を下げず、時間をかけてリピーターを増やすことによって、収益力を高める戦略を徹底してきた。リピーター比率は段階的に向上し、今では20~25%を占める。これに伴い、冬場の閑散期の稼働率は、開業初年度の約50%から2年後には70%程度まで高まった。開業以来、最高で46回も宿泊した顧客がおり、5回以上宿泊した顧客が約700人に上るという。

 星のや京都は、軽井沢に続く星のやブランドの2号店に当たる。まず、軽井沢の熱烈なリピーターも取り込むため、同一のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)システムを京都でも使えるようにする。星のや京都のスタッフは、顧客の食事の好みなど宿泊時の細かな要望についての履歴をパソコン画面上で検索し、京都でも軽井沢と同様の対応ができるようになる。

船着場でチェックインを受け付け、非日常感を演出

写真2●嵐山中心部の渡月橋のたもとに整備する船着場。船で10分かけて客室まで案内する
写真2●嵐山中心部の渡月橋のたもとに整備する船着場。船で10分かけて客室まで案内する
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 星のや京都の客室は桂川に面しており、原則として船でアクセスするようにしたのも特徴だ。嵐山中心部に近い渡月橋(とげつきょう)の船着場でチェックインを受け付け、星のや京都のスタッフが船で10分ほどかかる客室まで案内する。

 これも、星のや軽井沢の運営を通じて顧客心理を研究し、ゆったりとした時間を過ごしてもらうためのノウハウを引き継いだものだ。星のや軽井沢でも、到着時にチェックインする小屋とコテージを意図的に離れた場所に配置している。この間を車で5~10分送迎するひと手間によって顧客は非日常感を味わうことができる。また、旅館スタッフは車での送迎時の会話や雰囲気などから顧客がどのような目的で来訪しているかを察知し、これに合った食事や記念日プランなどをその場で提案している。同様の仕組みを星のや京都でも実施する計画だ。

 星のや京都の宿泊料金は1泊1室・休前日で7万円からに設定しており、京都の外資系高級ホテルや最高級の日本旅館とほぼ同等である。星野社長は「リーマンショックの影響で当社でも法人向けの研修や会議旅行などは低迷しているが、個人旅行は前年比で見ても好調に推移している。今後も個人のリピーターを重視する方針を推し進める」と強調した。星のやブランドの高級旅館は、2011年に沖縄県の離島・竹富島で、2012年には富士山麓でも開業させることも明らかにした。