写真1●総合スーパーのベイシアが2009年4月に岐阜県に開業した新店舗「関店」
写真1●総合スーパーのベイシアが2009年4月に岐阜県に開業した新店舗「関店」
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 北関東を地盤にする総合スーパーのベイシア(群馬県前橋市)は数年以内に、次世代の業界標準EDI(電子データ交換)の採用と、売り場での品出し回数の激減で、現在約18%の売上高販売管理費率(販管費率)を17%に引き下げる計画を立てている。わずか1ポイントの低減とはいえ、18%の販管費率はもともと大手スーパーと比べて10ポイント近く低い値だけに、他社とは重みが異なる。

 まずは2009年度中に、菱食や伊藤忠食品といった大手の卸業者など、ベイシアの取引額の60~70%を占める主要な仕入れ先75社との間で、次世代標準EDI「流通BMS(ビジネスメッセージスタンダード)」を開始する。2009年4月までに、既に75社中20社と流通BMSで接続済みである。これまではEDIの仕様が各社ごとにバラバラで仕入れ業務に無駄が多く、データ送信にも時間がかかっていた。ベイシアは流通BMSで仕入れを見直す。

 同時に、売り場での品出し回数や商品の前出し回数を大幅に減らしながらも、品切れや顧客の購買意欲をそぐような陳列ボリュームの少なさを回避できるよう、商品ごとの適正在庫数の割り出しを進めていく。ベイシアはこれを「販売数と陳列数の比例化」と呼んでいる。2009年4月にオープンした岐阜県の新店舗「関店」でも、同規模の既存店実績を基にした販売数と陳列数の比例化に開業時から取り組んでいる。

 例えば、ある商品については、これまで1日1回だった品出し回数を週1回に減らすことを考える。1週間の販売実績数に、売り場のボリューム維持に必要な数まで考慮した「適正在庫数」を週1回の品出し時にすべて補充してしまえば、品出し回数は従来の7分の1に減る。情報分析によって、「週販+ボリューム感」を維持できるだけの適正在庫数を追究。1週間に1回の作業でまとめて補充してしまうと割り切ることで作業工数を極端に減らし、人件費を抑える。ベイシアは店員ができるだけ棚の商品に触らずに済む方法を考えて、オペレーションコストを減らすのだ。そうやって浮いた費用で価格競争力をさらに高める。

写真2●ベイシアのIT推進部長で、流通技術研究所の所長でもある重田憲司氏。<br>売り場では、少ない品出し回数で最適な在庫数を満たす「販売数と陳列数の比例化」に取り組む
写真2●ベイシアのIT推進部長で、流通技術研究所の所長でもある重田憲司氏。
売り場では、少ない品出し回数で最適な在庫数を満たす「販売数と陳列数の比例化」に取り組む
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 ベイシアのIT推進部長で、情報システム子会社に相当する流通技術研究所(群馬県伊勢崎市)の所長でもある重田憲司氏は、「流通BMSによる仕入れ業務の標準化と、情報分析と作業改善の組み合わせである当社独自の販売数と陳列数の比例化が進めば、販管費率の引き下げに貢献できる」と語る。

 ベイシアが大手に負けない低価格で競争力を維持できているのは、販管費率の低さがあってこそだ。もちろん、一層の合理化には思い切った業務の見直しや割り切りも不可欠になる。そこでベイシアは業界でもいち早く、流通BMSの採用を決めた。品出し回数を従来よりも極端に絞り込むというのは、総合スーパーにおける売り場維持の常識を覆す取り組みでもある。