丸五技研の佐々木猶裕代表取締役社長
丸五技研の佐々木猶裕代表取締役社長
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 プリント配線基板の中堅メーカー、丸五技研(東京都大田区)は、納期を従来の半分近くまで短縮した新サービス「試作・量産の短納期サービス」の本格受注を2009年3月に開始し、売り上げ拡大に取り組んでいる。イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士の現場改革手法であるTOC(制約条件の理論)によって実現したという。50平方メートル(1ロット相当)の両面板であれば受注から中3日の4日後に納品、多層板であれば5日後に納品できるとしている。

 プリント基板の短納期化への取り組みはキョウデンなど他社も進めているが、量産品は特別対応でも1週間以上の納期を必要とするものがほとんど。「競合の類似サービスよりも2倍以上のスピード。営業開始から1カ月間で取引先の反応は上々」と佐々木猶裕代表取締役社長は自信を見せる。同社の1日当たりの生産能力は700平方メートル程度。このうち短納期サービスは150~200平方メートル程度まで応じる。取引先の短納期の需要量には十分に応えられる生産能力としている。

 丸五技研は2001年の民事再生法申請から立ち直りを賭けて生産改革に取り組んできた経緯を持つ。運転資金をうまくやり繰りするうえでも、在庫削減を実現するTOCの手法が立ち直りに不可欠だった。年商は30億円規模で推移している。

 2007年秋以降の景気下降の影響を受け、プリント基板メーカー各社は苦境に立たされている。丸五技研は相対的には堅調で、他社が3割台の稼働率にあえぐ間も7割の稼働率を維持し、2008年7月期は黒字を死守した。それでも、2009年同期は最終赤字に転落する見通しだ。景気下降を踏まえて新たな営業提案が必要と考えた佐々木社長は、2008年にTOCのコンサルティングを手がけるゴール・システム・コンサルティング(GSC、東京都千代田区)と契約。TOCの問題解決手法である思考プロセスなどを用いて、顧客にとって魅力的な「断れない提案」とは何かを1年間検討した。

 同社によると、得意先である遊技機メーカーは、新製品の発売前などに製品在庫を何万台も抱える。新製品は販売数量を予想が立てにくいうえ、製品の組み立てに必要なプリント基板を生産する海外メーカーは、コストは安価だが量産体制に入るまでに3週間~1カ月程度の時間を要するからだ。そこで丸五技研は、海外メーカーの量産体制が整うまでの期間を補う手段として、短納期サービスを提案する。海外メーカーと比べれば割高だが、発売間もない時期での在庫リスクや欠品リスクを抑えられるメリットをアピールできると考えた。

 生産設備の稼働状況を見える化するパソコン・ツールを独自開発するなどしながら、通常納期品と共存して特別納期品を滞りなく流せる生産ノウハウを確立した。