「このビデオカメラは本当にすごいんですよ」――。店員が手にした商品の特徴を落ち着いて話す。といっても店頭でははない。写真専門店チェーンのキタムラは、2009年5月7日にベテラン社員が商品を説明する姿を撮影した動画を「カメラのキタムラ ネットショップ」上に掲載し始めた。実店舗同様の安心感をネット上の顧客に感じてもらうのが狙いだ。第1弾としてニコン「COOLPIX P90」やキヤノン「IXY DIGITAL 510IS」、パナソニック「LUMIX DMC-GH1」など12の商品を扱っている。

 キタムラの子会社でEC事業を展開するピクチャリングオンライン(横浜市)営業部の直江貴仁氏が商品説明を動画で流そうと考え始めたのは2008年6月。当初は無料で使える動画投稿サイトの利用を検討した。しかし、「Youtube(ユーチューブ)などを使えば見終わった消費者はほかのコンテンツに流れてしまうので集客効果が低い」(直江氏)と危惧した。そこで、IT(情報技術)ベンチャーのピーヴィー(東京都渋谷区)が提供するASP(ソフトの期間貸し)サービス「VeeShop」を採用した。

 キタムラではネットでの販売に力を入れており、1カ月当たりのホームページ訪問者数(月間ユニーク数)は2009年5月現在で48万人。これを2010年3月までに100万人へ引き上げる目標だ。「将来的には実店舗への誘導に使いたいし、ベテランだけでなく女性や若手社員も接客動画に出演させたい」と直江氏は語る。今回掲載した12の動画は外部の映像プロダクションに撮影と編集を任せたが、「今後はノウハウを蓄積して自前でやっていく」(直江氏)。販促用の動画コンテンツの制作コストは下がっており、同様の取り組みをする企業は今後も増えていきそうだ。