アサヒ飲料(東京・墨田)が業務ルールの見直しと新システムの導入で、自動販売機への在庫補充作業を効率化した。自販機1台当たりの補充作業時間を約3.2分削減し、全体の20%弱を短縮。販売本数を事前予測することで補充作業時の自販機との往復回数は2回から1回に半減した。

 定価販売が基本である清涼飲料の自販機は飲料メーカーにとってうまみの大きいビジネスである。量販店での値引き合戦に巻き込まれないからだ。しかし、人手による補充作業の効率化は常に課題で、非効率さは人件費の高さに跳ね返ってくる。

 その意味で、2007~2008年はアサヒ飲料にとって大きな変革の年になった。2001年から自販機で商品を相互販売してきたカルピス(東京・渋谷)と、2007年10月に自販機事業の統合を決断。2007年12月に自販機事業の運営会社アサヒカルピスビバレッジ(東京・中央)を共同で設立した。狙いはさらなる品ぞろえの強化と両社のスケールメリットによる補充作業の効率化だ。アサヒカルピスビバレッジは国内にある自販機の総台数の約10%、22万台を抱える業界4位の存在になった。同社で補充作業を担当する従業員は約600人いる。

●カルピスとの事業統合でローコストオペレーションを追求
●カルピスとの事業統合でローコストオペレーションを追求

 アサヒカルピスビバレッジの従業員が実施する在庫補充作業を効率化するため、IT(情報技術)活用も強化した。2008年10月に、自販機の在庫補充を効率化する新システム「React(リアクト)」を本格稼働させ、補充作業の見直しおよび統一を実施した。新システムはアサヒ飲料とアサヒビジネスソリューションズ(東京・墨田)、NECが共同開発した。システム投資額は約13億円に上る。

 アサヒ飲料は2008年4~7月にかけて、同社が設置している自販機18万台のうち4万台を対象にリアクトを先行導入してきた。そして、同年10月までにリアクトを安定稼働させ、カルピス側が設置している自販機4万台のうち2万台を含む、合計6万台にリアクトの対象範囲を広げた。

 リアクトを活用した結果、自販機1台当たりの補充作業時間は従来よりも約3.2分短縮できた。20%弱の作業時間短縮に相当する。これは目覚しい改善である。定期的に自販機を「回訪」する補充担当者1人当たりの1日の補充台数が25台だった場合、1日30台になる計算が成り立つ。補充台数が同じなら、以前よりも1時間ほど余裕ができるので、自販機の品ぞろえ(商品コラム)や配列を見直したり、新規の設置提案をオフィスビルのオーナーに持ちかけたり、といった営業活動も行える。

●新しい補充ルールと営業端末を採用したシステム「リアクト」で、清涼飲料の自動販売機の補充作業を刷新
●新しい補充ルールと営業端末を採用したシステム「リアクト」で、清涼飲料の自動販売機の補充作業を刷新
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