マブチモーターは2008年12月期決算の営業利益が前期比約51.6%減の大幅な減益となったのを受け、全社的にコスト削減活動に取り組む。「収益性改善委員会」を立ち上げ、全社で販売管理費の約20億円削減に取り組むほか、海外を中心とした生産拠点では、生産量が減少しても、標準原価を維持するための切り詰めを行う。同委員会の委員長を務める亀井高取締役生産本部長は「これまでもコスト削減には取り組んできたが、全社を包含した取り組みとしては初となる」と話す。

 2008年9月に今期の年次計画を立てたが、その後主要な販売先である自動車、音響・映像機器、情報通信機器などの市況が悪化。これを反映して12月に販売予測を下方修正し、同月末に収益性改善委員会を立ち上げた。2009年1月から本社約60部門の販売管理費の内訳を分析し、総額約20億円のコスト削減目標を掲げた。

 60部門では、それぞれの目標を達成するためのアクションプランを策定し、委員会でその妥当性を検討した。「将来の成長に悪影響を及ぼさないよう、開発費や本社部門の人件費は維持する」という方針の下、削減の主たる対象は出張旅費や残業代、外注費、図書新聞費などにした。2月19日に全社キックオフミーティングを実施して施策を発表。実行のイシニアチブは部門に任されるが、定量的な成果を委員会で集約し、四半期ごとに全部門長が集まってそれぞれの進ちょく状況を報告する。予定通りの成果が上がっていない場合、部門長が理由を説明し、必要に応じて施策を見直したり新たな施策を提案したりするというPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回す。

全世界の販売会議もテレビ会議に代替

 亀井取締役は「既に出張旅費は激減する効果が出た」と指摘する。全世界に15カ所の生産、販売拠点を展開する同社では、会議などのための海外出張が多かったが、その多くをテレビ会議で代替している。2009年1~3月に開催したテレビ会議は145回と前年同期間の3倍に増加した。全世界の販売拠点の拠点長30人を集めて行う会議もテレビ会議に切り替えた。

 海外の生産部門で実施する標準原価維持活動では、生産プロセスの見直しや消耗品の削減、人員管理の効率化などによって、生産量が半減しても年間の標準原価を昨年並みに抑える。

 従業員の入れ替わりが激しく、1カ月で数百人単位が退職する中国などの生産拠点では、毎月従業員の動向調査を行う。退社予測の精度を上げ、採用・教育コストの削減を図る。従来は従業員が退職してから新規採用準備を行っていたが、事前に予測を立て、採用・教育を計画的に行うことで、それらの活動にかかる費用を削減する。「こうした取り組みは以前からやっていたが、徹底していなかった。不況を期に基本を徹底し、スリムな体質を作り、次の飛躍に備えたい」と亀井取締役は話す。