都内に新設したEPリモートセンターの様子。オペレーターが常駐し、アウトバウンドの電話だけで解決できそうな簡単なトラブルは遠隔で対応する
都内に新設したEPリモートセンターの様子。オペレーターが常駐し、アウトバウンドの電話だけで解決できそうな簡単なトラブルは遠隔で対応する
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 富士ゼロックスは2009年8月までに、国内に4400人いるデジタル複合機の保守担当者「カストマーエンジニア(CE)」の活動状況をモニタリングできるシステムを全面稼働する。客先を訪問する時刻が守られているかどうかや、修理に手間取って1カ所で長い時間作業を続けていないかどうかなどを、全国の拠点にいるCEの上司がシステム画面から監視できるようになる。予定時間を超えても保守作業が終了していない時は上司に自動的に電子メールが飛び、専門の技術者に応援を要請するなどの処置をただちに取れる体制を整える。

 既に2008年8月から東京と静岡、愛知の3拠点に所属する合計約300人のCEを対象に、モニタリングを試験的に実施している。その結果、ゼロックスが機種ごとや顧客ごとに定めている標準の保守時間を超える「長時間作業」に陥った件数を前年比で30%削減できた。CEの保守作業が長引いている状態を上司が早めにキャッチしてフォローを出した成果だ。

 これまでは「朝、拠点を出てから夕方戻ってくるまで、CEの活動状況の詳細を上司が把握できず、対応が後手に回ることがあった。そこでCEの活動状況を見える化することにした」(張替鋼一・執行役員カストマーサービス本部長)という。

 CEモニタリングに先立ち、2008年7月にCE全員が使う携帯電話に搭載するソフトを改良した。同月、「コールバック管理」は4400人のCE全員に適用した。同管理は、CEがトラブルを知らせてきた顧客企業に電話をかけ、「○時に修理にうかがいます」と約束した時刻を携帯電話の専用画面から入力する。客先に着いたら画面の「到着」ボタンを押して上司に返信する。そこからが作業の開始時刻になる。保守作業が完了したら「報告」ボタンを押して、次の顧客企業に移動する。これだけのやり取りでも、CEが顧客企業と約束した到着時刻を守れているかや、保守作業に何分かかっているかを把握できる。

 このコールバック管理も成果が出ている。CE手配を要請した顧客企業から「いつ来るのか」と催促の電話がかかってくる件数は、前年比で60%減った。顧客企業からの緊急対応の要請件数に対して、「駆けつけられる」と手を挙げたCEがその時点から15分以内に客先に電話をかけるなどしてコールバックを完了できた件数の割合は、2009年4月上旬時点で83%まで高まっている。

異常の予兆を検知できるシステムも稼働

 このほかにも保守体制の革新を進めている。2009年1月末に、客先にある複合機の異常の予兆を検知するための「EP(エレクトリック・パートナーシップ)リモートセンター」を東京と大阪の2カ所に設置した。東西で30人のオペレーターがいる。そして、全国で合計30万台ある複合機を、異常の予兆を知らせるアラートを同センターに自動送信できる最新機種に切り替えるよう顧客企業に勧めているところだ。ブロードバンド回線を介したEPリモートセンターへの接続も勧めていく。

 そうなれば、トラブル発生時に顧客企業からゼロックスのコールセンターに緊急対応依頼の電話がかかってくる前に、紙づまりや部品の磨耗、トナー交換、用紙切れなどをキャッチして、ゼロックス側から電話をかけるなど早めにアクションできるようになる。こうして、「少しでも複合機のダウンタイムを短くし、稼働品質を上げていく」(張替執行役員)。既にEPリモートセンターと接続を開始した顧客企業からは好評だという。

 予兆のアラートを受け取る「EPシステム」は自動的に、CEの現場派遣が必要なトラブルの兆しなのか、それともEPリモートセンターからオペレーターが客先に電話をかけるだけで対応や状況確認ができそうなトラブルかを切り分ける。EPシステムからCEに自動的に「出動命令」が飛んだ場合は、先述のようにCEが客先に訪問時刻を告げる電話をかけるコールバック管理の対象案件になる。

 一方、EPリモートセンターのオペレーターから客先に電話をかけるアウトバウンド型の「EPコールバックサービス」も併用することで、症状が軽そうなトラブルの予兆に遠隔対応。ゼロックスは、CEの作業管理とEPリモートセンターが行う予兆管理の両輪で保守のサービス品質を向上させていく。