「埼玉西武ライオンズ」の運営会社西武ライオンズ(埼玉県所沢市)は、2009年シーズンからICカード型会員証を用いたCRM(顧客情報管理)システムを本格的に稼働させた。2008年はファンクラブ会員に来場回数に応じた特典を用意していたが、チケットと場内での飲食、グッズの3つの購入額に応じて新しく作った「Lポイント」を付与する。1Lポイントは1円の換算で、チケット購入に利用できる。

 西武ドームがある所沢市は、他球団の本拠地と比べて人口が少ない。繰り返し来てくれたり、場内で飲食物やグッズを買ってくれたりする優良顧客の存在が収益を左右する。ファンクラブ会員への還元を高めてリピーターを増やしていく方針だ。観客動員における会員の比率を2008年の35%から2009年は40%へ高め、飲食、グッズの売り上げは前年比10%増へとそれぞれ引き上げることを目標にしている。

 Lポイントの還元率は、各会員のチケット購入金額に応じたステージによって異なる。ファンクラブへの入会当初は、「一般会員」というステージから始まり、チケット、グッズ、飲食の購入金額の3%がポイント還元される。ICカード型会員証を使いながら購入したチケットの合計額が5000円を越えると還元率が5%の「ブロンズ」に、1万5000円からは7%の「シルバー」に、3万円を超えると10%の「ゴールド」になる。交換しなかったLポイントは翌年に繰り越せる。

 プロスポーツチームのファンクラブ組織では、入会時に支払う年会費の金額に差をつけることで異なる優待サービスを提供することが一般的だ。西武ライオンズのように“リピート客”に還元率を上げていく仕組みは珍しい。

 西武ライオンズのファンクラブは毎年8万~10万人で推移している。2009年シーズンからは、会員番号をはじめとする前年のデータを引き継げることにした。従来は前年から継続する場合でも、翌年にも再び入会手続きをしなければならなかった。会員にとっては入会作業の手間が省けるし、球団にとっても経年推移のデータを蓄積できる。

 また、Lポイントは球場以外でも貯めることができる。ファンクラブ向けの会員専用ページで「お気に入り」に登録しておいた選手がお立ち台に上がると30Lポイント、「試合予想ゲーム」に勝つと10Lポイントが会員に与えられるなどだ。試合に来てもらえない日やオフシーズンでもチームと接点を持ってもらえるようにする狙いだ。ネットでのグッズ購入にもLポイントが付く。

 CRMシステム開発に携わったのは、佐々木将之事業部シニアディレクターだ。前職のIT(情報技術)ベンダーでは外食チェーン向けのCRMシステムを構築していた経験を持つ。「これまで来場してくれたファンが球場でどのような購買行動をしていたかは分からなかった。システム強化の一番の狙いは行動分析だ。ロイヤルカスタマーへの還元というマーケティングの基本が整った。今後はLポイントの知名度向上に努めたい」と話す。

 2009年はこれまでのところファンクラブへの入会は例年より20%増で推移している。再入会の手続きを簡略したことや、2008年日本一になったこと、中島裕之内野手らが参加したワールド・ベースボール・クラシックの影響と見られている。