女性向けカタログ、オンライン通販大手のオットージャパン(東京都世田谷区)が、通販業者の販促、受注、物流などの業務を請け負う「フルフィルメント・サービス」の事業拡大に力を入れている。2008年春にフルフィルメント・サービスの専門部隊を立ち上げ、もともと付き合いのあった企業からの案件を中心に、1年で約10億円の売り上げを生み出した。今後は積極的に売り込みをかけ、3年後に倍の20億円の売り上げを目指す。無店舗販売(カタログやオンラインを使った通販)、有店舗販売に続く第3の中核事業に育ててい く。

 1986年に住友商事との合弁で「住商オットー」として日本国内で事業をスタートした同社は、主に女性向けアパレルや家庭用品などを扱うオンライン・カタログ通販業者として成長してきた。2007年末に独オットーが住友商事から株式を買い取り、同社の100%子会社となった。2008年度2月期の売り上げは約189億円。子会社のエディー・バウアー・ジャパンは有店舗販売を主とする。

 バーチャルとリアルの店舗による物販事業に続く第3の事業の柱として、2008年からフルフィルメント事業の育成に乗り出した。背景には、ネット通販などの市場の成長がある。調査会社の富士経済(東京都中央区)が2008年末に発表した調査結果によると、ネット通販市場は2008年から2010年にかけて15%、モバイル通販市場は29%の伸びが見込まれている。「メーカーがネット通販に乗り出すなど、参入企業が多様化しているが、商流や物流のインフラをすべて自前で構築するには多くの費用がかかる。これまで通販事業で築いたインフラの共同利用にはニーズが高いと判断した」とフルフィルメントサービス部の勝井武二部長は話す。同社と直接競合しない、食品やヘルスケアなどの企業顧客を中心に、フルフィルメント・サービスの顧客を開拓していく。

 2000年ごろからもコールセンターや物流センターで、部分的にほかの通販業者などの業務を請け負っていた。2008年3月にフルフィルメントサービス部を新設し、通販事業にかかわるサービスをワンストップで提供できる体制を整えて営業窓口も一本化した。具体的には、販促や購買履歴分析などのマーケティングサポート、受注代行や与信管理などの受注サポート、物流や倉庫管理、輸入検品代行などのバックエンドサポート、商品卸やサイト構築支援などのサービスを提供する。

 物流会社や国内主要通販会社も、サービス事業を展開しているなか、オットーのフルフィルメント・サービスは、以下の強みを生かす方針。

 1点目は、フルフィルメント・サービスの利用企業の商品などを同社の通販事業顧客へ訴求できる点だ。同社のカタログやネット通販を利用する顧客は35~55才の大都市圏在住の女性を中心に約600万人いる。しかも世帯年収は日本の平均世帯年収と比較すると約3割高く、年間購入金額も一般の通販顧客と比較して高いという。こうした顧客がオットージャパンから商品を購入した際、商品配送時にフルフィルメント・サービスの利用企業の商品チラシなどを同梱する。加えて、顧客属性による反応率などの分析サービスも提供する。

 2点目は、受注や物流サービスに加え、商品の卸業務も行う点だ。通販業者は、オットーから仕入れた商品を自社の品揃えに加えることで、扱い商品の幅を拡大できる。既に食品の通販事業者が、オットーの商品を使ってアパレル販売に乗り出した例もある。

 このほか、自社開発した通販事業パッケージ・ソフト「AMOS」を活用したり、輸入・検品業務を代行したりすることで、コスト、利便性の両面で強みを打ち出していく。