ペット保険専業のアニコム損害保険(東京・新宿)が軌道に乗った。診療費の負担が大きい飼い主の悩みを解消し、保険事業を離陸させた。人の健康保険と同様の仕組みをペットに適用する病院窓口精算を提案。動物病院とペットショップを巻き込み、世界初の実用化に漕ぎ着けた。病院とショップをシステム支援し、独自の健保ネットワークを運営する。

 1年前の2008年1月10日、全く新しい損害保険会社が営業を開始した。その会社はアニコム損害保険。犬や猫、鳥などの家庭動物の病気やけがを対象にしたペット保険「どうぶつ健保」を販売している。年間3万円前後を支払ってアニコムのペット保険に加入すれば、動物病院で負担する診療費の50%を保険でまかなえる(限度額あり)。アニコムはペット保険専業の損保として、100億円程度といわれるペット保険市場で約70%のシェアを占める。

 ペット保険自体は目新しくない。小森伸昭代表取締役社長によれば、「これまで100社近くがペット保険に参入または参入を検討してきた。だが定着しなかった」。現時点でも競合は外資系を含めて数社あるが、いずれも販売規模は小さい。それではアニコムが軌道に乗ったのは、なぜだろうか。

動物病院の窓口で人の健康保険証に相当するアニコム損害保険の「診療記録簿」カードを提示すると、診療費の50%をペット保険でまかなえるうえに、余計な手続き無しにその場で窓口精算が完了する。写真は、アニコム損保のペット保険に対応している東京都板橋区の動物病院「アニホス」での様子
写真撮影:山西 英二
動物病院の窓口で人の健康保険証に相当するアニコム損害保険の「診療記録簿」カードを提示すると、診療費の50%をペット保険でまかなえるうえに、余計な手続き無しにその場で窓口精算が完了する。写真は、アニコム損保のペット保険に対応している東京都板橋区の動物病院「アニホス」での様子
写真撮影:山西 英二

 同じペット保険でもアニコムが構築した仕組みは斬新で、飼い主にとって使い勝手のいいものだった。アニコムのペット保険に対応する4000軒以上の動物病院では診療費の50%を支払えばよい。残りの50%は余計な手続きをしなくてもアニコムから動物病院に支払われる。この発想は人の健康保険制度と同じである。アニコムは2008年4月から契約者のペット向けに人の健康保険証に相当する写真入りの「診療記録簿」カードを発行し、このカードを動物病院の窓口で提示すれば、その場の診療費負担が半分になるようにした(上の写真)。