フランスベッド・グループで,介護設備のレンタル・販売を行うフランスベッド メディカルサービス(FBMS)は2008年1月,販売管理や物流管理など一部の基幹業務システムを含む13台のIAサーバー機を,仮想化技術を使って3台に集約した(図1)。

図1●仮想化前と後のサーバー構成<br>フランスベッド メディカルサービスは,仮想化ソフトの「VMware Infrastructure 3」を用いて13台のサーバーを実質的に3台に集約した。
図1●仮想化前と後のサーバー構成
フランスベッド メディカルサービスは,仮想化ソフトの「VMware Infrastructure 3」を用いて13台のサーバーを実質的に3台に集約した。
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 サーバー統合のきっかけは,2008年3月でサーバー機の保守サポートが打ち切られることだった。当初は後継機種への移行を考えたが,OS(Windows Server 2000)のバージョンアップが必要となり,それに伴うアプリケーションの改修などにより,1億円近いコストがかかることがネックになった。さらに同社では当時,サーバーの台数が増えることによる運用管理コストの増大が課題となっていた。

 これらの課題を解決するため,仮想化技術を使ってサーバーを集約することにした。新しいサーバー機上で仮想化したシステムを稼働することで,Windows 2000 Serverで構築したシステムを,OSの変更やアプリケーションの改修をすることなく利用できる。

1カ月かけ膨大なテスト・ケースを作成

 新システムへの移行作業は,基幹業務システムの開発やサーバーの運用保守の一部を手掛けていたTISが行った。TISの提案により,仮想化ソフトにはヴイエムウェアの「VMware Infrastructure 3」を採用した。ただし当時,TISには,VMwareによる基幹業務システムの構築・移行プロジェクトの経験がなかった。検証実験によるノウハウの蓄積はあったものの,基幹業務システムの移行だけに「技術面での不安があった」(FBMS 森勝博 業務部システム課 課長代理)という。

 しかもFBMSが利用してきたアプリケーションの中には,帳票パッケージなどで,VMware上での動作を開発元が保証していないものもあった。

 こうした技術面の不安は,入念なテストを実施することで乗り切った。移行対象となるサーバーの中には,膨大なテスト・ケースの作成に,1カ月かかったものもあるという。幸い,実施した検証テストでほとんど問題は発生せず,既存のアプリケーションのバージョンアップや改修は必要なかったという。

 もう一つ難しさがあったのは,移行完了の目標期限として設定した2008年1月末日までに,既存のシステムを停止して移行作業を実施できる日が,延べ3日間しかなかったことだ。サーバー13台すべての移行作業を3日間で行うのは困難を極める。そこで,移行作業のやり方を工夫した。

 移行対象のサーバー13台の内訳は,レンタル管理,販売管理,物流管理といった基幹業務システムのサーバーが6台,FAXサーバー1台,ドメイン・サーバー2台,ウイルス対策サーバー1台など。このうち基幹業務システムのサーバー6台は,シトリックス・システムズ・ジャパンの「Citrix Presentation Server(2008年2月からCitrix XenApp)」を使ったシンクライアント・システムで,それぞれ冗長構成で稼働していた。