カシオ計算機は仮想化技術を利用し,IAサーバーの統合を進めている。サーバー仮想化ソフトは,当初はVMware ESXを利用していたが,2007年5月にオープンソースのXenを併用開始。システムの特性や重要性に応じて両者を使い分けることで,サーバー統合のコストメリットを高めた。

部門任せではセキュリティが不安

 同社は04年より,本社や技術センターなどに散在していた部門サーバーの統合を進めている。従来,部門サーバーの管理はコンピュータに明るい担当者がボランティア的に行ってきた。

 そのため,トラブル対応やバックアップ作業,アクセス管理などは部門ごとにバラバラだった。加えて,「セキュリティの強化が叫ばれる時代になり,部門任せではセキュリティのチェックが難しいという問題が浮き彫りになってきた」。カシオ情報サービスの国吉典仁 常務取締役は,サーバー統合に動いた背景をこう説明する。

 サーバーをセンターに集め,運用コストの削減とセキュリティ強化を図ることがサーバー統合の主な目的だ。基幹業務が稼働するIBMのSystem iの統合は04年に着手。最終的に,グループ会社を含めた約20台のサーバーを2台に統合する計画である。

 IAサーバーについては,用途別に統合パターンを作った(図1)。まず,SCM(サプライチェーン・マネジメント)などの基幹系システム,あるいはアプリケーションが仮想化に対応していない場合は仮想化技術の適用対象からはずした。仮想化したのは中規模以下のシステム。具体的には,DBサーバー(OracleやSQL Server)やAPサーバー,Webサーバーなどである。既存のファイルサーバーは,大容量のファイルサーバーを用意して,そこに統合した。

図1●IAサーバーの統合パターン<br>VMware ESXは中規模以下のシステムに,Xenはインフラ系のサーバーに用いている。
図1●IAサーバーの統合パターン
VMware ESXは中規模以下のシステムに,Xenはインフラ系のサーバーに用いている。
[画像のクリックで拡大表示]

パラバーチャル・ドライバで高速化

 サーバー仮想化ソフトは当初,VMware ESXのみを利用した。IAサーバーの統合を開始した05年末,VMware ESXぐらいしか選択肢がなかったことが理由だ。1台の物理サーバー上に7~8台程度の仮想マシンを設けて,そこに既存サーバーを移行させていった。サーバーのスペックは,CPUがXeon 3.16GHz×2またはOpteron 2218 2P/2C,メモリーが16Gバイトといった程度である。

 サーバー統合は順調に進み,運用品質向上といった効果が表れ始めた。ところが,国吉常務取締役は「思ったほどコスト削減効果が上がらない」と感じ始めた。VMware ESXの価格が占める割合が大きいこと,ヴイエムウェアが認定するストレージが比較的高価だったことが主な理由である。

 そこで,オープンソースのハイパーバイザー「Xen」を利用することでコスト削減が図れないか検討に入った。ところが,06年秋にXen 3.0を試してみたところ,散々な結果に終わった。カシオ情報サービス システム運用グループの山崎一泰リーダーは「全くパフォーマンスが出なかった」と語る。