カスタマーズセンターの3階にある「訓練道場」での見学ツアーの様子
カスタマーズセンターの3階にある「訓練道場」での見学ツアーの様子
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 豊田自動織機の「カスタマーズセンター」(千葉県市川市)の年間来場者数が、2009年3月期に過去最高の約1万1000人に達した。同施設は、改善活動のショールームとなっている。最近は、物流センターだけでなく一般のオフィスや店舗でも業務改善活動が盛んだ。本家であるトヨタグループからそのノウハウを学ぼうと、物流関係者だけでなく金融機関や各種サービス業者などの異業種も多数、この「改善ショールーム」に詰め掛けるようになった。同社はトヨタの改善ノウハウを売り物にして自社の商品やサービスを広く知ってもらい、将来的には商談につなげていきたい考えだ。

 2001年4月に開設したカスタマーズセンターはもともと、物流業者に豊田自動織機のトヨタL&Fカンパニーの主力商品である自動倉庫やフォークリフトを知ってもらうための専用施設だった。カスタマーズセンターがあるJR京葉線の二俣新町駅の周辺は、企業の物流センターが林立する首都圏有数の物流センター街になっている。豊田自動織機は顧客企業のすぐそばにショールームを用意して、物流システムの営業活動を進めてきた。館内ではフォークリフトの運転技能講習や安全運転講習を受講できる。

 しかし、それだけではどうしても来場者が業界関係者に限られ、頭打ちになる。2003年7月にカスタマーズセンター長に就任した梅原茂氏は、年間6000人ほどだった来場者数を倍増させるべく、過去2年ほどでカスタマーズセンターの展示や見学ツアーの内容を大きく見直してきた。

 4階建ての館内を階ごとにテーマ分けし、1~2階を自動倉庫やピッキングカート、ハンディ端末などを使った物流改善の展示に当てた。3階は幅広い人が学べる4S(整理・整頓・清掃・清潔)を中心とした改善ステップ体験ゾーンにし、4階では毎週のようにトヨタ生産方式や業務改善、在庫管理などの有料セミナーを開催するようにした。梅原センター長自身もセミナーで講師を務める。約2時間の見学ツアーを先導する女性スタッフの説明フレーズも梅原センター長がすべて書き直し、実践を徹底させた。

 累計6万5000人に達した来場者からは3~4階の見学ツアーやセミナーが好評で、先日も航空会社の客室乗務員がトヨタ流の基本である4Sの考え方を部下に促すマネジメント手法を学んで帰ったという。トヨタ流のコンサルティングサービスを提供する本職のコンサルタントまで見学に来ることがある。3階の一角に設置した「訓練道場」は特に人気で、来場者自らがピッキング動作を通じてトヨタ流の特徴であるビデオ分析を体験でき、4Sの次にくる5番目のS(しつけ)の大切さを理解できる仕組みになっている(関連記事)。