映画・演劇大手の松竹は、保有する不動産活用を支援する情報システムの導入に取り組んでいる。2008年11月から順次、紙の台帳などで管理してきたデータを同システムに入力。2009年末までに全部で約40件の物件のデータを網羅し、本格的な活用を始める。三菱地所リアルエステートサービス(東京・千代田区)が提供するCRE戦略支援システム「CRE@M(クリーム)」を採用した。CREは「コーポレート・リアル・エステイト(事業用不動産)」の略。

 松竹が導入中の新システムは、修繕の履歴や費用、周辺の賃料相場、地震リスクなど保有不動産に関するデータを一元的に管理し、多様なデータを画面上で分かりやすく表示・分析することができる。同社は新システムの本格運用を始めるまでに、賃料の設定や建て替えなどの意思決定を支援できる体制を整える。

 松竹は、本社や映画館が入る東京都中央区の東劇ビルをはじめ、大阪市や京都市など全国主要都市の繁華街に約40件の不動産を保有する。現在、これらの物件には飲食店など約100件のテナントが入居している。好立地にある物件が多く、その大半がほぼ満室である。今のところ、昨年9月の米リーマン・ブラザーズの経営破綻に始まった金融危機の影響はないという。

 しかし、市況低迷が長引けば、空室が増えたり、賃料交渉が厳しくなったりする可能性が増す。松竹の梶原秀雄・不動産部長は、「本業の映画館では、全国の日次売り上げデータを集約し、すぐにその後の上映回数や上映時間帯などに反映している。一方で、本業ではない不動産事業ではデータ活用が遅れている。情報力を高めることで、事業の採算性を高めたい」と話す。

 松竹の本業である映画・演劇事業は、ヒット作品の有無による業績の浮き沈みが激しい。2010年2月期は配給映画「おくりびと」のアカデミー賞(外国語映画賞)受賞や「ヤッターマン」のヒットなどによって業績回復を見込むものの、2009年2月期は不振だった。不動産事業は、全売上高の936億円に対して6.5%(2008年2月期)にすぎないが、毎年20億円以上の営業利益を安定的に稼ぎ出し、同社の業績を下支えしている。