写真1●滑走路に続くゲートで整備ツールの貸し出し・返却を管理する(羽田空港)
写真1●滑走路に続くゲートで整備ツールの貸し出し・返却を管理する(羽田空港)
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写真2●ICタグタグを取り付けた主な物品
写真2●ICタグタグを取り付けた主な物品
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写真3●ライトの内部にも特殊なタグを取り付けた
写真3●ライトの内部にも特殊なタグを取り付けた
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写真4●無線機はカバーとストラップにタグを装着
写真4●無線機はカバーとストラップにタグを装着
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写真5●自分が持つ物品をパネルで確認する
写真5●自分が持つ物品をパネルで確認する
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写真6●従来はボードにIDのマグネットを張り付けて管理していた
写真6●従来はボードにIDのマグネットを張り付けて管理していた
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 全日本空輸は2009年2月、ICタグを利用した航空機整備ツールの管理システムを本格稼働させた。2008年6月、羽田空港に試験導入し、このほど成田空港も併せて本格運用を開始した。整備士が専用ゲートを通過するだけで、ツールの貸し出し・返却の手続きが完了する(写真1)。手作業による管理を自動化し、「機体整備の作業に集中する」(整備本部機体計画部施設設備チームの安藤潤二主席部員)のが狙いである。

 離発着する航空機をその場で整備する部門が導入した。ICタグを取り付けたのは、整備士が使う各種ツールから、無線機、車両のキー、整備マニュアルなど計16種、約2400個にも及ぶ(写真2)。制服のネームプレートに付けたICタグで、整備士個人との関連付けを管理している。導入にあたり最も苦労したのは、ICタグの形状や受信感度の調整である。「ツールなどの物品はカゴやカバン、制服のポケットなど様々な場所に入れる。同じカゴでも整備士で持ち方が違い、反応が違ってくる」(安藤氏)からだ。

 様々な物品に取り付けるため、ICタグの種類や形状を、構築を担当したNECグループと共に工夫した。例えば、フラッシュライトは柄の部分と内部の2カ所にICタグを取り付けた。内部に付けたタグは丸めて収める(写真3)。無線機はカバー内部とストラップの2カ所である(写真4)。

 感度については「電波の指向性や強さを調節し、読み込み範囲を限定した」(安藤氏)という。隣のゲートを通過するなどしたほかの整備士の持ち物を認識してしまうのを防ぐためだ(写真1参照)。一方で、物品にはICタグを基本的に2カ所ずつ付けて、確実に読み取れるようにした。

 新しい仕組みの導入で、必要なツールの整備拠点からの持ち忘れ、航空機や滑走路などへの置き忘れを厳格に管理できるようになった。

 整備に出る際は、ゲートに付属したタッチパネル画面で自分が所有するツール・物品の内容を確認する(写真5)。そして戻って来た際に忘れ物の可能性がある場合、ゲートのランプやタッチパネルの画面で警告する。従来の仕組みでは、整備士の記憶を頼りに捜索するしかなかった。

 一方、従来はなかった、システムトラブルのリスクがある。「新システムは安定している」(安藤氏)ものの、従来利用していたホワイトボードとマグネットを残し、有事に備えている。従来は整備士自身の人手による管理だった。整備士が持ち出すツールから機器と個別番号を書いたマグネットをはがし、それをホワイトボードに張り付けておくというものだ(写真6)。

 今後、効果とコストを見極めて、国内他空港への展開を判断する。システムの導入は整備作業への集中だけでなく、羽田空港などで将来見込まれる運行便数の増加に備える狙いもある。

 システムはNECグループの支援で構築した。名称は「LEVET SYSTEM」(Line Maintenance Equipment & Vehicles Entire Tracer System )である。