写真1●全日本空輸が運営するSNSサイト「旅達空間」
写真1●全日本空輸が運営するSNSサイト「旅達空間」
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 全日本空輸(ANA)は2009年4月から、自社のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイト「旅達空間」の会員向けに、ツアー旅行の体験記の投稿を促進するキャンペーンを始める。同社が企画する会員限定ツアーの参加者に、体験記をつづるように依頼。投稿した写真や文章を通じて、参加者同士が旅行後に交流する機会を作り出す。「参加者同士で旅行体験を共有してもらうことによって、出会った仲間とまた旅行したいというリピート需要を喚起する」と営業推進本部WEB販売部の高柳直明主席部員は狙いを説明する。

 旅達空間は、会員が旅行の体験談や撮影した写真を投稿し、ほかの会員が旅行に訪れる前の参考にしたり、記事や写真にコメントを寄せて会員同士で交流したりできるサイトである。同サイトでは会員専用ツアーの提供も手がけており、2009年2月時点での同サイト経由の売り上げは月間数千万円となっている。この売り上げをさらに高める一策として、今回の体験記投稿キャンペーンを企画したのだ。

 キャンペーンのヒントとなったのは、2008年6月に実施した会員限定ツアーの「石垣マンタ水中撮影ツアー」だ。同ツアーの参加者が写真付きの旅行体験記を投稿したところ同行した別の参加者たちが呼応し、撮影した写真を披露しあったり、コメントを寄せ合ったりするなどの活発な交流が生まれた。ANAの企画担当者の投稿にも参加者から好意的なコメントが寄せられた。

写真2●全日本空輸の高柳直明・営業推進本部WEB販売部主席部員
写真2●全日本空輸の高柳直明・営業推進本部WEB販売部主席部員

 この交流に注目したANAは、会員同士が旅行体験を共有し「一緒に旅行した仲間」としてきずなを深めることが、再会するという新たな目的によるリピート需要を喚起したり、ロイヤルティーを向上させたりするのに役立つと判断した。そこで体験記を記述したツアー参加者にもれなく500円相当の商品券を提供するほか、リピート顧客向けに1万~2万円の旅行券を提供するなどの特典を用意して、需要を促進する計画である。

 高柳主席部員は、今回のキャンペーンを商品企画にも生かしたい考えだ。例えば、投稿記事に対するアクセス数や寄せられたコメント数、さらには記事の内容や会員同士の交流の様子を精査し、実施済みの会員限定ツアーに対する顧客の満足度を探る材料とする。好評な要素については次の商品企画に生かす狙いだ。「ツアーの参加者同士が誘い合って、別のツアーにも一緒に参加してくれる可能性などを見極めたい」と高柳主席部員は語る。会員同士が結び付きを強めて一緒に旅行するようになれば、ツアー商品の売り上げ増加も見込める。