宅配ピザ大手の「ドミノ・ピザ」を運営するヒガ・インダストリーズ(東京都千代田区)は2009年度中に、店舗で利用する顧客からのピザの受注システムを刷新する。現在、注文全体の40%が顧客がパソコンまたは携帯電話を使う「ネット注文」になっているが、2010年3月までにはネット注文の割合を全体の半分、50%まで引き上げる計画だ。この目標達成を前提にして、ヒガ・インダストリーズはドミノ・ピザの業務フローをネット注文を中心に再構築し、店舗システムを見直す。現在の店舗システムは、従来までの主体だった電話注文を前提に組み立てられている(関連記事)。

 ネット注文が受注手段の主軸になると想定すると、これまでの店舗業務の中には簡略化できるものが出てくる。分かりやすいのは、注文情報の入力だ。ネット注文では顧客が自らウェブ画面から個人情報や注文内容を入れてくるので、店舗側で配達先の住所や注文内容をいちいち入力する手間が無くなる。店舗システムに求められる要件は変化することになる。

 その一方で複雑になる業務もある。今後はネット注文の顧客に限定した割り引きなどの販促を増やしていく予定だが、そうなると割引の適用条件を電話注文の顧客とは区別する場面が急増する。そこで割り引きの適用ミスを自動的に防げる機能を店舗システムに盛り込んでいく。

 管理部情報システムグループの加藤雄司グループリーダーは「これまでネット注文は電話と並ぶ注文方法の1つととらえていた。だが、これからはネット注文の顧客だけに特典を付与するなど、ネット注文に顧客を誘導する販促を意図的に展開していく予定だ」と語る。

店舗システムの刷新前にハードを更新

 ネット注文時代の新しい業務フローをシステムに反映していく前に、ヒガ・インダストリーズは2008年11月までに店内に置く6台のパソコンやサーバー、プリンター、そして店内ネットワークを先行して刷新した。ネット注文の増加に伴い、店舗で使用するパソコンは今まで以上に重要な存在になるからだ。既に注文の40%がネットであり、「顧客との連絡手段も電話から電子メールに移行していく可能性がある。パソコンは今まで以上に止められなくなる」(加藤グループリーダー)。そのため、ハードとネットワークだけは先に新型機に替えた。

 ピザ店内のシステム利用環境は、パソコンの設置場所としては決して望ましい場所ではない。厨房で使うパソコンは油や粉などの影響で目詰まりして壊れるなど、故障頻度がオフィス環境よりも高いという。本社では常に交換用のパソコンを50台も用意しているほどだ。

 とはいえ、店舗にシステム担当者は常駐していない。本社にも情報システム部員は5人いるだけだ。彼らは今、店舗システムの刷新準備に時間の70%を割いている。「ハードやネットワークに割ける人員はせいぜい1人だけだ」(加藤グループリーダー)。そこでヒガ・インダストリーズはヤマトシステム開発(東京都江東区)のPCサポートサービスを利用し、閉店時間を利用して先にハードとネットワークだけは変えてしまうことにした。