2009年3月上旬に開かれた5期生の経営戦略研究会
2009年3月上旬に開かれた5期生の経営戦略研究会
[画像のクリックで拡大表示]

 カタログ通販大手のフェリシモは社内留学制度とでもいうべきリーダー教育「経営戦略研究会」に力を入れている。大学から講師を招いて経営理論や様々な業種の企業のケーススタディーを学びながら、フェリシモとの違いを浮き彫りにしていく実践的なカリキュラムだ。毎月1回の週末合宿を含めた1年間のロングラン研修を、既に108人が受講している。この数は約350人いるフェリシモ社員の3分の1に当たる。

 フェリシモが経営戦略研究会を開始したのは2005年で、毎年20人前後が受講してきた。現在学んでいるのは2008年12月から参加している第5期生の18人。これまでに1~4期生の合計90人が1年間の試練を乗り越えて「卒業」している。フェリシモは2010年2月期中に、商品選択や配送の自由度を高めた、インターネットでの衣料品や雑貨の新しい販売システムを稼働させる計画だ。そうした従来とは異なるビジネスモデルを実際に考えて動かしていくのは、経営戦略研究会の卒業生である若手リーダーたちになる。

 矢崎和彦社長は「当社の将来を担う経営幹部候補を社員の約3分の1まで育てられたといえる」と胸を張る。商品のデザイン性に定評があるフェリシモでは感性を磨くのは当然大事なのだが、同時に経営理論や他社分析を体系的に学ぶ人材育成にも熱心なわけだ。

1年間は休日返上で経営理論の勉強漬け

 経営戦略研究会の参加者は、年齢も所属も経歴もバラバラだ。自ら立候補して論文を提出したうえで、日常業務はいつも通りにこなしながら、1年間は休日返上での勉強漬けになる。授業は財務諸表の読み方や他社の強みと弱みの研究、そしてフェリシモ自身に当てはめるとどうなるかといったチーム討議が中心になる。毎月合宿で顔を会わせるメンバーは立場の違いを超えて議論し合うので、自然に親しい間柄になれるという。

 仕事との掛け持ちで1年はきつい時間が続くが、参加者は皆、真剣だ。研修なので参加費はかからないが、卒業時の成績が悪いと60~70冊もある課題図書の購入費が自己負担になってしまうルールなので、気を抜くことはできないという。

 実は経営戦略研究会を発案した矢崎社長は2003~2005年にかけて、社長業をこなしながら週末に地元の神戸大学大学院に通い、デザインと経営をテーマにした論文を書き上げた経験がある。その時の同級生の中には、卒業後にフェリシモに入社してきた学生までいる。矢崎社長は自身の経験から経営理論を体系立てて学ぶ大切さを再認識し、即座に大学から講師を招いて「社内留学」を始めることを決めたという。