富士フイルムは、課長層に意識改革を促す研修「FF-CMP(富士フイルムチェンジマネジメントプログラム)」に取り組んでいる。2008年5月より本格導入し、2009年3月までに約1200人いる課長のうち8割が受講した。2009年2月からは400人いる部長層にも拡大する。

 中間管理職への大がかりな研修に踏み切った背景には、2004年度から「第2の創業期」とする中期経営計画がある。映像や光学デバイスなどの事業領域を担う同社は2009年度までの中期経営計画「VISION75」で、写真事業に代わり、フラットパネルディスプレー材料などの成長事業を主体とする事業構造への変革を目標に掲げている。そこでまず、現場に近い課長に意識改革を促すことにした。

 1回あたり25~30人の課長を集めて、2泊3日で実施している。富士フイルムは12事業部門からなるが、職種や職場などが異なるメンバーで1組5人で議論する。「様々な事業部門から集まり泊まり込むことで、普段の担当業務から離れて新しい視点が見つかりやすくなる」(人事部人材開発グループの刀根宏担当課長)

 今回の研修の特徴は、自らをよく見つめ直してもらったうえで、自己変革を決意してもらうことだ。入社してから最も印象に残っている仕事といった「過去の自分」を振り返り、さらに上司や部下10人が事前に評価した多面(360度)診断の結果である「現在の自分」を基に見つめ直す。5人のメンバーが互いにこれらの情報を題材に議論して、自らの長所や課題を認識していく。自己変革のポイントを整理し、変革への活動計画を策定して上司や部下にも発表する。

 6カ月後には行動計画の進ちょくを確認するフォロー研修を1泊2日で実施する。このフォロー研修までの間、変革の決意を持続できるようにコミュニティーサイトを利用してもらう。イントラネット上にある、同じ研修回に受講したメンバーだけが参加できる場だ。お互いの進ちょくを確認するなどのやり取りができる。

 また、受講から1年たったメンバーから順に、上司や部下による多面診断を再実施することも検討している。最初期のメンバーは2009年5月に実施する見込みだ。

 今回の研修内容は、グループ会社の富士ゼロックスが2003年から取り組んできた研修内容をベースにしている。多面診断は独自に追加した。今後もこの研修は継続して行う予定だ。富士フイルム人事部開発グループの吹野清隆担当部長は「経費削減が重視されるなかでも、この研修は力を入れていく。課長が変わると現場の雰囲気が明るくなって、職場が元気になるからだ」という。