ヤマトホールディングス傘下で、ファッション衣料などの買い物代行事業を手掛けるネコレ(東京都中央区)は、製造小売り(SPA)型アパレル企業への一般客からの取り寄せ注文対応を代行する新事業「クロネコおつかい便」を2009年4月にも開始する。利用店舗が在庫を切らしていた場合などに顧客が取り寄せ注文したとき、処理の大半をネコレが代行する代わりに、取引が成立した際に手数料を徴収するサービスである。2009年3月上旬時点で、大手アパレル企業からも引き合いがあるという(関連記事1関連記事2)。

 ファッション商品は一般に商品寿命が短く、SPAアパレル企業は売れ残りのリスクを軽減するために各商品の製造量を絞っていることが多い。このため、1つの商品が各地の店舗に並ぶ点数はごくわずか。ファッション雑誌などに掲載された商品は、顧客が店頭に購入に訪れてもとっくに完売しているような事態が起こりがちだった。

 アパレル企業にとっては販売機会の損失であり、さらに顧客の満足度も下げてしまいかねない事態である。また、他店舗に在庫が残っていた場合も、店舗間で配送するなどの特別対応が必要になり、店頭の従業員の業務負荷を増やす原因となっていた。

 クロネコおつかい便は、こうしたアパレル企業の課題に対応するサービスである。具体的な流れはこうだ。まず、顧客の注文をネコレのウェブサイトで引き受け、これをアパレル企業の本部に通知する。アパレル企業は本部から各店舗の在庫状況を確認し、その結果をネコレのサイト経由で顧客へ通知する。本部または店舗に在庫が残っていた場合には、ヤマトグループのヤマト運輸が当該店舗へ赴いて商品を集荷し、顧客宅へと配送する。

 この仕組みを利用することで、アパレル企業は店頭での取り寄せ注文対応の負荷を軽減でき、販売機会の損失も減らせる。「アパレル本部が客注対応用の在庫を店頭在庫とは別に確保しておく必要も無くなる」(ネコレの土屋啓代表取締役社長)。相応に在庫リスクの軽減も見込める。

 ネコレは取引が成立したときにアパレル企業からは「システム利用料」を、顧客からは配送費相当の「おつかい料」を受け取る。「アパレルにリスクなく利用してもらえるように、固定費の負担を求めないことにした」(土屋社長)

 ネコレは従来から買い物代行事業を手掛けているが、同事業にも相乗効果がある。従来は、顧客の注文を受けるたびにネコレがほぼ手作業でアパレル各社に在庫を問い合わせていた。今回のサービスを利用してもらえれば、在庫を問い合わせる手間が軽減できるうえ、システム利用料をアパレル企業側から受け取るぶん、従来より安い料金で顧客のニーズに応えられるようになる。