ショップ検索やブログ、SNSなど、ゾゾタウンにより多くの消費者を呼び込む仕掛けを次々と加えてきたことも、アパレル会社にとって大きな魅力だ。2007年10月にはゾゾリゾートというトップページを作って使い勝手を向上。2008年6月からは人気のファッション雑誌12誌に掲載された商品の多くをゾゾタウンで購入できるようにもした。

 こうしたネット戦略を次々と実行に移す柱となっているのは、十数人から成るIT(情報技術)部門、創造開発本部システム部だ。サイトが持つ機能の大半と、業積管理などの基幹システムを、自力で開発している。前澤社長は「たいていのビジネスの仕組みはシステムに落とし込める。経営幹部は全員、データベース構造などITに関する知識を持つべきだし、事業展開のスピードと柔軟性を考慮するとITは内製化したほうがいい」と言い切る。

 内製化の徹底は物流業務にも見られる。千葉県習志野市に保有する「ZOZOBASE(ゾゾベース)」と呼ぶ物流センター内のシステムも、すべて自社開発し、商品の流通量に応じて臨機応変にプログラムを変更できるようにした。

 物流センターで働くのはすべて同社のスタッフだ。「洋服好きばかりなので、商品のたたみ方や梱包の仕方も丁寧だし、職場の雰囲気も明るい」(前澤社長)。ここにはスタジオがあり、アパレル会社から納入した商品を様々な角度から撮影、サイトに掲載する。こうした多機能で、進化し続ける物流センターを武器に2008年5月、アパレル会社向けにショッピングサイト代行サービスも始めた。

●スタートトゥデイの主力事業の推移<br>前澤友作社長(写真中央)は220人のスタッフ全員と気軽に接し、職場の雰囲気の活性化に余念がない。全社懇親会など社内イベントも多い<br>写真撮影:山西 英二
●スタートトゥデイの主力事業の推移
前澤友作社長(写真中央)は220人のスタッフ全員と気軽に接し、職場の雰囲気の活性化に余念がない。全社懇親会など社内イベントも多い
写真撮影:山西 英二
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「想像戦略室」が感度の高い人材を採用

 事業規模が大きくなると、前澤社長がすべての業務に目を配るのは難しくなる。そこで、ファッション感度の高い人材の採用と、格好良さを追求しながら仕事を楽しむ風土作りに注力している。

 幸い、採用にはあまり苦労していない。「ゾゾタウンの熱心な会員が採用試験に応募するケースが多い。だから、彼らの感性で買い付けをしても通用する」と前澤社長は明かす。秘書室と人事部の機能を持つ「想像戦略室」を社長直轄部署と位置付けコミュニケーションを密にしていることもあって、「最終面接に残った人はびっくりするくらい私が望む感性を持っている」と前澤社長は笑う。

 「ただ働いて夜寝るだけの人生はつまらない。特に若いスタッフが何のために働くかを考える機会を増やしている。突き詰めると、『好きなファッションの仕事で人の役に立てれば幸せを実感できる』となる」。前澤社長はこまめに社内を歩き、200人を超すスタッフに頻繁に声をかけている。