JTBトラベランドで「団塊世代プロジェクト」に取り組む経営企画部の福永里美営業企画チームマネジャーと北山幹夫経営企画チームマネージャー。手に持っているのは、旅の傾向や行動パターンによって4分類した団塊世代の顧客に送った絵葉書風のダイレクトメール
JTBトラベランドで「団塊世代プロジェクト」に取り組む経営企画部の福永里美営業企画チームマネージャーと北山幹夫経営企画チームマネージャー。手に持っているのは、旅の傾向や行動パターンによって4分類した団塊世代の顧客に送った絵葉書風のダイレクトメール
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 JTBグループで最多の販売拠点を持つJTBトラベランド(東京・中央区)は、団塊世代の顧客を中長期的に増やすためのプロジェクトを、じっくりと腰を据えて実践している。およそ1年半前にスタートさせたこの「団塊世代プロジェクト」で、旅行会社のCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)戦略では難しいとされる「どこへ」という顧客ニーズを探ることに挑む。同社の経営企画部経営企画チームの北山幹夫マネージャーは、「お客様がいつ旅に出るかよりも、次にどんな旅をしたいのかを予測することははるかに難しい。だが、これが分かれば効果的な販売促進策を打てる」と話す。

 JTBトラベランドはまず2008年1月、55~60歳の顧客8万5000人に対し、旅や趣味などを聞くアンケートをバリアブルダイレクトメールにして送った。バリアブルダイレクトメールとは、すべての顧客に同じ内容で送るのではなく、顧客セグメントごとに異なる文面や画像を印刷したダイレクトメールを送るというものだ。今回はアンケートへの回答を依頼する文章や装飾となる写真を顧客セグメントごとに変え、アンケートの質問項目自体は共通のものにした。

 具体的には、性別や家族構成などの基本的な属性や直近の旅行記録によって既存顧客を分類して、全部で20以上の種類のダイレクトメールを作成・発送した。例えば、夫婦での旅行が多い顧客には「ご夫婦を包み込むようなすてきな旅」、子どもとの家族旅行を好む顧客には「家族のきずなを強める旅」という言葉を入れたりするといった具合だ。「人口の多い団塊世代のお客様はひとまとめにされることを嫌がる傾向がある。この点に注意を払えば、お客様の心により強く刺さるダイレクトメールにできるのではないかと考えた」と北山マネージャーは語る。

 狙いは見事に的中し、いつもなら1割に満たないことが多いダイレクトメールによるアンケートの返信率が3割に迫ったという。プロジェクトチームは、2万人以上からの回答の結果を分析し、顧客を旅の傾向や行動パターンから4つに大別した。歴史や文化に興味を持っており史跡や博物館を好む「学者型エクスプローラー」タイプ、ゆっくりとレジャーを楽しみたいタイプなどがある。

絵葉書風ダイレクトメールは、顧客タイプごとに裏面の写真だけでなく表面の文章も変えてある
絵葉書風ダイレクトメールは、顧客タイプごとに裏面の写真だけでなく表面の文章も変えてある
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 こうして2008年11月、今度はこの4分類にしたがって4種類のユニークなダイレクトメールを作り、団塊世代の顧客に送った。ヤマト運輸のメール便で送ったこのダイレクトメールは、旅先から知人がくれた観光地の様子を知らせる絵葉書きのような体裁を取る(写真参照)。表面には手書き風のメッセージが、裏面にはその観光地の写真が印刷してある。“絵葉書き”に記載されたメッセージの最後に、「この旅をアレンジしてくれたのはJTBトラベランド兜町です。いつもよくしてくれるので、旅の相談をしてみてはいかがですか」とさりげなく来店を促すコメントが添えられている。

 絵葉書風のダイレクトメールに2000円の旅行券を同封したところ、その利用率が順調に推移しているという。「販促キャンペーンとしては成功だ」と北山マネージャーはいう。ただし、プロジェクトチームはこれで満足しているわけではない。今後拡大が見込まれる団塊世代の旅行需要を効果的に取り込むための道筋をつけたいのだ。JTBトラベランドはショッピングセンターを中心に出店しているせいもあって主要顧客は30~40歳代。相対的に少ない団塊世代の新規顧客を増やすことこそが、同社のさらなる成長の鍵を握る。

 プロジェクトチームは現在、4つに分類した顧客がそれぞれ実際にどこへ出かけたかを調べて、分類と目的地の相関をつかもうとしている。分析結果を団塊世代の新規顧客開拓への足がかりとする考えである。