ヤマト運輸が独自に作成して全拠点に配布している消耗品の購買専用カタログ
ヤマト運輸が独自に作成して全拠点に配布している消耗品の購買専用カタログ
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 ヤマト運輸は全国に展開している宅急便の拠点で、伝票やシールに代表される各種消耗品の購買品目数を絞り込み始めた。2008年秋以降、現場にいる約15万人の配達員は、同社が独自に作成した紙の購買専用カタログを見ながらパソコンの電子購買システムにアクセスして、絞り込んだ消耗品を購入している。

 各拠点では、宅急便には欠かせない伝票や割れ物などを示すシールに始まり、配達員の制服や帽子、配送で使う台車、店頭に掲げるのぼり旗や配送車両のミニチュアカーまで、数千品目の消耗品を日常的に買っている。そのうち、金額規模で全体の約半分を占める主要な1500アイテムについては、2005年からカウネット(東京・品川区、当時はネットコクヨ、2009年1月に同じコクヨグループのカウネットと合併)が提供する電子購買システム「べんりねっと」を使って購入してきた。

 ただし、配達員の入れ替わりが激しい拠点では、電子購買システムの操作に不慣れなため、買いたい消耗品をなかなか電子カタログから見つけられない人が多く、購入までに時間がかかっていたという。そこで電子カタログから逆行するようだが、「当社オリジナルで紙のカタログを5000部作成し、全拠点に配ることにした。配達員の使い勝手を上げながら、絞り込んだ消耗品の電子購買を促進する」(調所正俊・構造改革部調達課係長)。

 電子カタログから紙のカタログに移行するのは「後退」する印象も受けるが、ヤマト運輸は「紙のカタログを作る過程で消耗品のメーカーや品質、価格を精査して絞り込みが進んだ。みんなが紙のカタログを見て注文を出すようになれば、自然に集約効果を期待できる。拠点ごとの個別注文はほとんど無くなっていくだろう」(調所係長)と見ている。逆に言えば、これまでは全国の拠点が個別に購入している消耗品がまだまだ多かったことを意味する。

 例えば、拠点の入り口付近に掲げるのぼり旗。地元の果物配送を受け付けることを示すりんごやみかんなどを表示した旗が全国の拠点ごとに作成されていて、絞り込む前はのぼり旗だけで現在の5倍の品目数があった。しかし、わずかにデザインの違いがあるだけなので、「集約しても何の問題もないものが多く、紙のカタログには5分の1しか掲載しなかった。これで集約が進む。現場から苦情はきていない」。同じく台車も以前は数十種類あったが、紙のカタログには大きさと運搬時の静かさに応じて絞り込んだ20種類しか載せていない。

 消耗品を絞り込もうとすると通常は、各拠点が従来から取引してきた仕入れ先との折衝が必要になる。この面倒な交渉業務は本社の調達課が一手に引き受け、現場では個別交渉しないように要請している。調達課は消耗品価格の入札を実施して絞り込みを進めるとともに、消耗品の品質も全国で統一している。以前は明らかにオーバースペックなものがあったり、逆に品質がヤマト運輸の基準に照らして劣るものまであったりと様々だった。宅急便の伝票のように、業務上、絶対に切らすことができない消耗品は、あえて複数の仕入れ先に分けてカタログに掲載するなど、リスク分散の配慮もしている。

 ヤマト運輸は紙のカタログを配布したことで電子購買の利用率が上がれば、絞り込みによる集約効果で「億単位のコスト削減効果が見込めそうだ」としている。