INAXは、社内の出産・育児休職者向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で2009年2月から職場復帰に向けた相談コーナーを設ける。同社には2008年度(2009年3月期)で出産・育児休職者が65人いる。SNSでこうした休職者に向けて社内の状況を情報発信してきたが、閲覧だけの利用にとどまりがちになっていることから、「質問デー」と呼ぶ気軽に相談できる日を設けてSNSの双方向性を生かしたい考えだ。

 同社では例年、出産・育児休職者はほぼ全員が復職するが、いったん復職してもその後退職してしまうケースがある。事前にコミュニケーションを強化することで復職後の定着を確実にするのが今回の取り組みの狙いだ。

 同社が出産・育児休職者向けのSNSを作ったのは2008年5月。それ以前は社内報を送付するだけで社内の情報を伝える手段が乏しかった。出産休暇などから復職した社員からは、組織変更など会社で何が起きているのかを知りたかったとの声が寄せられていた。

 そこでこのSNSは新製品情報のほか、川本隆一取締役社長が執筆しているブログ、実際に復職した社員の体験談などを掲載。休業中に社内の人事異動や組織変更といった社内の動きを知らせて、職場復帰した際の不安を解消を図ってきた。

 さらに今回実施する相談デーでは、過去に育児休業を取得して復帰した経験を持つ社員が回答役になる。仕事と家庭を両立するための工夫や、復職後仕事に慣れるまでにどの程度かかったのかなどをアドバイスし、SNS上にやり取りを蓄積する。

 2009年度からは、復職者にも引き続きSNSの会員にとどまってもらうことで、休職者からの質問や相談がさらに活発になることを期待している。

 同社は「2010年度までに女性管理職の比率を現状の2.3%から5%に引き上げる」目標を掲げている。それだけに今回のような復職後の家事と仕事の両立の支援に力を入れている。「2007年度に、結婚や育児を理由にした退職者数は24人あった。これを1人でも減らしていきたい」(人事・総務部EPOCH女性活躍推進室の桑原靖子室長)。復職者へのフォローとしてSNSのほか、復職して数カ月後に上司と本人、人事部門スタッフで面談する取り組みも2008年4月から始めた。「『育児との両立などで自分だけが大変』といった精神状態に陥る前にフォローする」(桑原室長)ためだ(関連記事)。