チラシ削減分をDMにシフト

 同社の店舗の販促は、数年前までは新聞折り込みチラシが主体だった。会員データを生かしてDMを送る活動の成果が上がるにつれ、新聞折り込みチラシからDMへのシフトも同時並行で進めている。店舗の3分の2はFC(フランチャイズ)加盟店で、販促費の配分は店長の裁量だ。DMは送料などで1通100円程度の費用がかかる。同じ費用でチラシなら約20倍の枚数を出せる。「店長の立場では、チラシのほうが多くの顧客にアプローチできる感じがする。DM販促の意義を理解してもらうのに苦労した」(竹中氏)

 オートバックス店舗の販促費は売上高の2~3%程度。ここ2~3年は、年率2割ずつチラシの予算を減らし、その分をポイントカード会員へのDM販促に振り向ける方針を徹底している。

 この方針と併せて、DMの効果を検証した指標の数字を店舗側に示すようにした。本部はDMの回収率を重視するが、店舗は売上高の変化に関心がある。そこで「貢献率(期間中のDM特典利用者の売上高÷全体の売上高)」が重要になる。

 DMの貢献率は20%前後に上る。竹中氏は別途アンケートを実施したが、不特定多数にばらまく折り込みチラシの貢献率は約5%にすぎなかった。こうした数字を示しながら店長たちを説得していった。

 さらに店長が任意に顧客を抽出できるようにし、予算の範囲内で最小限の数のDMを送れる仕組みも整えた。「レガシィの保有者は客単価が高い」「(主婦などの利用が多い)ワゴンRの保有者は価格感応度が高い」といった分析結果も共有し、特定車種の保有者だけを抽出しやすくした。

自動車ディーラーも狙う激戦区

 オイル交換や車検のほかにも、車周辺でタイミングが鍵を握る商品・サービスは多い。車の買い替え時期に必要な車買い取りサービスや、更新時期が決まっている自動車保険などだ。

 ただし、「自動車メーカー系のディーラーは所得や家族構成などのもっと深い顧客情報を持っている。国内新車販売の落ち込みを背景にディーラーも顧客情報を活用した周辺事業拡大に本腰を入れてくる」(小売業に詳しい大和総研=東京・千代田=企業調査第三部の杉浦徹アナリスト)と競合激化を予想する声もある。

 オートバックスは車検サービス提供店を急増させており、2008年7月には445店に達した。ここ1~2年が、同社がサービス事業でメーカー系ディーラーの先手を奪う正念場になりそうだ。