下位顧客含めたサービス売り上げに視点移す

 そこで第2段階として、竹中氏は2005年ごろから、ライトユーザー層の来店促進につながる会員データ活用に取り組んだ。

 試行錯誤から導いた結論は、「過去の購入品目からアプローチするよりも、将来絶対に購入しなければならない商品・サービスを先読みしてアプローチしたほうが効果的だ」ということだ。「Aを買った人はBも買う傾向がある」といったパターンを追いかけて仮説を立ててDMを送っても当てにならなかった。だが「この時点でCを買う必要性に迫られているはず」という仮説を立てて送ったDMは明らかなヒット率の向上が見られた。

 例えば、「カーナビを買った人は、後に、新しい地図ソフトを買う可能性が高い」といった、過去の購入品目に関連したDMを送付したことがある。この場合の回収率(DMの特典利用数÷全体の送付数)は2~3%と従来のDMと比べて平凡な結果にとどまった。「関連商品についての仮説は色々試したが、なかなか当たらない」(竹中氏)

 そこで、分析の切り口にタイミングを加えた。例えば、オイル交換をした日から、保有車種によって3カ月後、6カ月後などにオイル交換を勧めるDMを送るという単純な方法でも、回収率は25%前後になった。購入品目を細かく分析するよりも、よほど即効性があった。

●オートバックスは行動を先読みしてダイレクトメール送付
●オートバックスは行動を先読みしてダイレクトメール送付
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 オイル交換の客を増やすことは、同社にとって大きな意味がある。オイル自体の単価は3000円程度だが、交換作業待ちの間に買い物をする顧客が多く、一万数千円の客単価になるからだ。

 2008年からは、走行距離も勘案してオイル交換時期をきめ細かく“先読み”する新システムを試行している。オイル交換時に走行距離を記録し、前回と今回の走行距離の差分から、最適なオイル交換時期を正確に推定しようというものだ。

車検を先読みするためデータを精査

 オイル交換のほか、車検の時期にタイミング良くDMを送るためのデータ活用にも2004年前後から取り組んでいる。車検切れの2~3カ月前に案内DMを送る。この成果も大きい。同サービスの売上高は年率約20%で急成長し、109億円(2008年3月期)に達している。オイル交換と同様についで買いを促す効果があり、車検料金以外の売り上げも平均1万8000円に達する。

 ただし、車検の時期を正確に知るには、会員データを精査し直す必要があった。従来から、顧客が店頭でポイントカードを作る時の申込書の項目に、「保有車種名」や「車検年月日」の記入欄はあったが、記入漏れが多かった。2004年ごろから、入会時に顧客に直接聞いて空白欄の無いよう徹底し始めた。このかいあって、車検時期が明確になっている会員は2008年には全体の約55%にまで達した。

 オートバックスの車検は自動車メーカー系ディーラーなどに比べて料金が安いが、値付けは店舗によって異なる。2008年にCRMのシステムを改良し、店舗ごとに自店の割引価格をDMに印刷できるようにし、価格による訴求をしやすくした。回収率が15~20%にまで上がった店舗もある。