自動車用品専門店のオートバックスセブンは、1100万人のポイントカード会員情報を生かして物販を伸ばしてきた。2005年ごろから、サービス重視の販売戦略を打ち出し、オイル交換時期などを会員情報から“先読み”する手法を確立。車検の売り上げも2割伸ばした。

 自動車用品専門店最大手で、国内に531店舗(2008年3月末時点)を持つオートバックスセブンは事業構造の転換期に差し掛かっている。物販は若者の車離れなどで伸びが見込みにくいことから、2005年からの中期経営計画で、次の一手として車検や整備などサービスの強化を掲げた。このサービス関連の販売を強化するために、2007年ごろから会員カードを使ったCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)を強化して成果を出し始めている。

オートバックスで長年営業企画・CRMを担当してきた竹中剛志氏
オートバックスで長年営業企画・CRMを担当してきた竹中剛志氏

 2008年3月期の国内売上高は3042億円。前年度比1.9%の微増にとどまったのは、カー用品物販の不振が大きな要因だ。ここ数年の業績をけん引してきたカーナビゲーションシステムなどカーエレクトロニクス機器は同4.2%減だった。

 その不振を補っているのが、サービスの売り上げ増だ。車検の売上高は109億円と前年度比2割増だった。「当社のサービス利用をCRMでお客様に働きかける活動が実ってきた」。同社でCRMを長年担当してきた竹中剛志氏(前・販売促進部営業企画グループIT企画グループ担当部長、2008年6月に関東エリア事業部に異動)はこう話す。

当初は優良顧客を抽出しDMに活用

 同社はCRMへの取り組みの歴史が長く、大規模なカード会員のデータ資産を持つのが強みだ。1980年には既に会員カードの発行を始め、94年にポイント制度を始めた。この制度は、買い物金額100円ごとに1ポイントが付き、次回買い物時に使えるというもの。「ポイントアップカード」の会員数は2008年7月時点で約1100万人に達している。セブン-イレブン・ジャパンなどが発行するnanaco(ナナコ)の約600万人などと比べても多く、専門店としては異例の規模である。しかも、稼働会員(1年以内に利用がある人)が半数を占める。

 このデータ資産の活用に向けた同社のCRM戦略は1990年代から2000年代前半までの第1期と、それ以降の第2期に分けられる。

 第1期は物販を重視しており、優良顧客の囲い込みを狙う施策を打ち出した。1994年から、顧客を大きく4ランクに分けている。このランク分けは、一般的なRFM(最近購入日・購入頻度・購入金額)分析によるもの。買い物金額だけではなく、来店回数やオイル交換回数など様々な要素をスコア化してランクを決める。

 最上級ランクの会員には「プラチナカード」を送付し、「バッテリー交換工賃無料」など様々な特典を提供することで、継続的な来店を働きかけている。2008年時点で、最上級ランクの会員は全体の13%程度だが、売上高では約8割を占める。

 さらに、上級ランクの会員に絞ってダイレクトメール(DM)や割り引きクーポンを郵送し来店を促してきた。物販が好調な時代は最上級ランクの会員は、「DMを“打てば響く”お客様」(竹中氏)であり、こうした手法が売り上げ増に直結した。

 ところが2000年代半ばから、優良顧客であるカーマニア層が減り、買い物などに車を使うライトユーザー層が増える傾向が鮮明になってきた。

●オートバックスは2005年ごろからライトユーザーをつかむ方策を強化
●オートバックスは2005年ごろからライトユーザーをつかむ方策を強化
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