新日石ビジネスサポートの田畑行弘代表取締役社長(写真右)と事業1部の飛騨泰広企画グループマネージャー(写真左)
新日石ビジネスサービスの田畑行弘代表取締役社長(写真右)と事業1部の飛弾泰広企画グループマネージャー(写真左)
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 新日本石油のシェアードサービス子会社である新日石ビジネスサービス(横浜市)は、グループの間接業務コストの削減で成果を出し続けている。同社が設立された2004年7月時点ではグループ全体でおよそ500人だった経理・人事担当の社員数を、2008年12月末までに350人程度にできた。以前よりも30%少ない人数で業務を遂行できるようにしたわけだ。

 シェアードサービスは、グループ各社や営業拠点、生産拠点ごとに散らばっている経理や人事などの共通業務を本社や専門子会社に集約することによって、余分な経費を削減するとともに業務品質の向上を図る手法だ。日本では2000年ころから大手企業を中心に導入が広まってきた。新日石ビジネスサービスはグループ各社を“顧客”ととらえ、人事や経理、施設管理などの業務を代行する。その数は経理で53社、人事で13社に上る。

 新日石ビジネスサービスの田畑行弘代表取締役社長は、「シェアードサービスは最初の仕込みが肝心だ」と語る。最初の仕込みとは、属人的になりがちで実態の把握が難しい間接部門の業務をすべて洗い出すことだ。同社ではまず、間接部門の社員1人ひとりが何の仕事をどれだけ時間をかけたているのかを計測し、業務フローの一覧表を作成。重複する業務や無駄な資料を削減したり、業務の簡略化を進めたりした。定型業務はマニュアルを作って、若手社員や派遣社員に任せるようにした。経験豊富な社員には難易度の高い業務を、派遣社員には平易な業務を、という住み分けである。

 ただしシェアードサービス会社は一般的に、社員の業務意欲を長期的には維持しにくいという潜在的な課題を持つ。シェアードサービス会社はグループ各社の間接業務をひと通り代行するようになった後、自身の売上高を減少させ続けることが使命となる。業績が縮小し続ける企業では、社員の業務意欲が減退しやすい。この問題に対処するために、新日石ビジネスサービスは働きやすさに着目した。

 同社は2007年3月に5カ条の「行動指針」を策定し、その筆頭に「自由と規律」を掲げた。午前10時に出社したり、午後3時に帰社したりといったフレックスタイム勤務を認め、ネクタイを着用しないカジュアルな服装の社員も少なくない。「当社のオフィスからはベイブリッジや富士山が見える。新日本石油本社よりも就業環境は良いかもしれない。最低限の規律さえ守ってもらえれば、のびのびと自由に働ける職場だ」と田畑社長は話す。緻密な業務分析に挑む一方で、リラックスした社風を作ることによって社員の生産性を向上させようとしている。

 新日本石油は、2009年10月に新日鉱ホールディングスとの統合持ち株会社を設立する予定だ。このため、新日石ビジネスサービスの業務範囲は今後ますます拡大する可能性が高い。

■変更履歴
 本文および写真の説明文において,社名と人名の一部が誤っていました。「新日石ビジネスサポート」「飛騨泰広企画グループマネージャー」としていましたが,正しくはそれぞれ「新日石ビジネスサービス」「飛弾泰広企画グループマネージャー」です。また,第1段落の最後に九州石油の給与計算業務に関する記述がありましたが,誤りだったため削除しました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2009/2/4 20:10]