三つのポイント

(1)データ・センターを分散し,災害に備える

(2)ネットワークと電源を冗長化し,LANの耐障害性を向上

(3)拠点のパソコンを本社で管理し,コンプライアンスを強化

 エフエム東京は1970年に開局した首都圏初の民間FMラジオ局である。日本のポップ音楽番組を中心に,ニュースや生活情報など多くの番組をリスナーに提供する。同社は,国内にある38の民間FMラジオ局が加盟するJAPAN FM NETWORK(JFN)のキー局でもあり,番組の一部を全国に配信している。

 ラジオ局の業務は,スタジオで編集した音声を電波を使って放送するもの。本来はラジオ局とインターネットの関連は薄かった。ところが,「この10年で急速にインターネットが重要な位置を占めるようになってきた」(総務局総務部システム担当の小田紀和氏)。

はがきとFAXがメールとWebへ

 インターネットが普及していなかった時代,リスナーからの情報提供手段は,はがきやFAXが一般的だった。いまやパソコンの利用が浸透し,携帯電話はほぼ一人1台に行き渡っている。こうした状況の変化とともに,リスナーからの投稿の主流は,メールやWebの入力フォームにシフトした。その結果,「ネットワークに障害を受けると,リスナーとコミュニケーションができなくなり,番組自体が成り立たなくなってしまう」(小田氏)ほど,インターネットへの依存度が高くなった。

 さらに,同社はラジオ放送だけでなく,番組制作で生み出された人脈やノウハウを核に,パソコンや携帯電話への情報提供・音楽配信,コンサートやイベントの企画,出版,物販,映画製作など経営の多角化を進めている。インターネットはこうした事業の基盤にもなっている。

 災害時の対応にもインターネットは欠かせない。電池で稼働するラジオ受信機は,大規模災害時にはテレビ以上に情報源として役に立つ。災害時は情報が錯綜(さくそう)するため,リスナーからの情報提供がラジオ放送には有用である。リスナーは,携帯電話やパソコンから情報を送ることが想定されるため,災害時でもサーバー・システムをダウンさせない工夫が必要となる。