本田技研工業(ホンダ)の子会社で、インド向けにバイクや自動車の補修部品を販売するホンダモーターインディアは、2010年までに情報システムと中継倉庫を整備して在庫削減を推し進める。手始めに、2009年6月には在庫管理システムを稼働させる。出荷頻度の低い補修部品を中心に、在庫管理システムが自動的に適正量をはじき出してくれるようにし、発注量を抑えて倉庫に置く在庫を最小限にとどめる。

 同社は主要な部品倉庫を首都のニューデリーに置いているが、2008年12月までにムンバイとチェンナイに中継倉庫を設置済みだ。2009年度にはコルカタにも設置する予定である。在庫管理システムと中継倉庫網が整う2010年度にはインド国内の倉庫全体で40%の在庫を削減し、同時にインド各地の自動車ディーラーがホンダモーターインディアに部品を発注してから届けるまでの配送リードタイムを最大で75%短縮することを見込んでいる。

 在庫削減を目指すのは、約3万点ある補修部品の9割を占める出荷頻度の低い内装関連の部品である。これらの部品は在庫金額でみると、全体の6割を占める。ここにメスを入れる。具体的には、在庫管理システムが過去3年分の出荷実績に基づいて、6カ月先までの需要を予測する。これまで需要予測は担当者の経験と勘に頼ってきたが、ここをシステムに置き換える。

 ホンダモーターインディアはシステムが推奨する在庫量に基づいて、日本やタイなどの部品の生産国に発注を出すことになるが、ニューデリーの主要倉庫に在庫が無い場合でも、ほかの中継倉庫に在庫があれば、生産国に発注するのではなく、倉庫間移動で迅速に対応して、余計な発注を抑える。

 加えて、中継倉庫が完備すれば、配送リードタイムを短縮できるので、常に自動車ディーラーから多めに発注が来ることはなくなると見ている。そうなれば、さらに在庫を削減できる。

 インドは国土が広いうえに、道路網の整備が進んでいない地域が多い。例えば、ニューデリーからチェンナイまで陸路で部品を運ぶと、道路事情がよくないので約8日もかかる。雨季には、さらに1日長くかかってしまうという。ホンダモーターインディアでアフターセールスを担当する谷口彰氏によれば、「地域によっては国内配送に最大で12日かかる場所もあり、欠品を恐れて各地域のディーラーは在庫を多めに抱えている」と明かす。だが、ムンバイやコルカタなどに中継倉庫ができて部品を融通し合えれば、最大でも3日あればインド各地のディーラーに部品を届けられるという。

初めてパッケージソフトでシステム構築

 今回の在庫管理システムは、サービジスティクスアジア(東京都港区)のパッケージソフト「サービスパーツマネジメント」を使って開発した。親会社のホンダは日本や欧州では自社開発した在庫管理システムを使っているが、それをインド子会社に適用しようとすると改修が必要だったため、費用対効果を考えて初めてパッケージソフトを選択した。ホンダモーターインディアの情報システム部門に所属する大野浩一郎氏は「インドで成功すれば、ほかの国にあるホンダの現地法人にもパッケージソフトの展開があり得る」という。

 在庫管理を徹底しなければならない背景には、インドでの販売台数の増加がある。市況が厳しいなかでも、2009年度には累計販売台数が40万台を突破することが見込まれる。販売台数が増えれば、それだけ補修部品のニーズも高まる。「インドでもほかの国と同様に、購入後のサービスが良くないと車が売れない時代になってきた。補修部品の供給体制を強化して、顧客満足度の向上につなげていきたい」(谷口氏)と意気込む。