パナソニック電工(旧・松下電工)が2008年4月から取り組んでいる「シゴトダイエットプロジェクト」が初年度の大詰めを迎えている。同プロジェクトは、2011年3月末までの3年間で社員1人当たり年間の労働時間を毎年50時間ずつ、合計150時間削減する目標を掲げたもの。月単位に換算すると前年同月比で平均4.2時間ずつ削減しなければならない勘定になる。2008年上期(4~9月期)での月当たりの前年同期比の削減時間は月平均1.5時間、その2カ月後の2008年11月で月2.1時間に伸びて年間目標に対して完了率が5割に達した。同社は2009年3月末までに月平均4.6時間の削減(年間55.2時間)を達成できると見込んでいる。

 同プロジェクトは、798部門が個々に改善テーマを現場から吸い上げ、取り組み中だ。2008年12月時点で2617テーマに取り組んでおり、これらの活動の積み上げで目標達成を図る。

 目下、目標達成に向けて全社で取り組み中のテーマの1つが、上期に打ち出した「会議資料のダイエット」だ。1つの会議で配布資料はA3用紙で1枚しか認めないことにした。また、会議報告書も所要時間2分当たり1枚という制限を設けた。ペナルティーを伴う強制ルールではないが、順守を呼びかけている。

 2008年度下期(同年10月~2009年3月期)は「資料ダイエット」を全社統一テーマに設定して現場からのテーマ申告を募っている。上期のテーマは「会議ダイエット」で、会議の運営方法の見直しなどを奨励した。「いきなり無駄を探せといわれても難しいため、無駄を探す視点も提示したうえで各部署に目標設定をしてもらっている」(岩瀬健弘プロジェクトリーダー)。資料の無駄を探す切り口として事務局が提案した1つが、ハードディスク装置(HDD)内の「文書ファイル名の付け方の統一」だという。名前の付け方を標準化すれば、探す際の作業の無駄を省ける。「職場の掃除には熱心でもパソコンの中まではなかなか意識が及ばない。このプロジェクトを考えるきっかけにしてほしい」(岩瀬プロジェクトリーダー)

 現場改善ばかりでなく、トップダウンでも労働時間短縮に向けて施策を実施する。2009年4月からの新年度では、現在は隔週の定時退社日を毎週にすることを予定している。

 同社がこれほど熱心に「シゴトダイエット」に取り組むきっかけとなったのは、30年前の同社の業績と従業員の生産性の相関関係を調べたことだったという。売上高が4.4倍になり企業は成長しているものの、1人当たりの経常利益は0.6倍に落ちていることが分かった。「仕事量が増えていることは確かだが、時代とともに必要性が薄れたものもあるはず。常に自分の仕事のやり方を見つめ直す企業文化を定着させたい」(村上通男常務)との期待も同プロジェクトにはかかっている。