カシオ計算機は2009年3月末までに、新しい営業支援システム「C-Active」を本格稼働させる。日本全国の量販店向け営業担当者約700人が利用する。これらの営業担当者は、担当地域の店舗を定期的に訪問し、効果的な販促方法を提案したり、製品の特徴を店舗スタッフに説明したりしている。今回の新システムは、こうした訪問営業の効率化や販促施策の効果検証などに活用する狙いだ。

カシオ計算機が開発した営業支援システム「C-Active」のメニュー画面
カシオ計算機が開発した営業支援システム「C-Active」のメニュー画面
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 新システムでは「PDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルを回しやすい仕組みを工夫した」(営業本部国内営業管理部資産運用管理室の井原実・係長)。優秀な営業担当者ほど事前に重点店舗をきちんと決めてそこを中心に訪問計画を立てていることを踏まえ、C-Activeには店舗の重要度を勘案して訪問計画を立てる機能を組み込んだ。

 営業担当者がC-Activeの画面を開くと、担当する店舗名と、販売実績を基にした重要度、推奨訪問回数などが自動的に表示される。担当店舗名を月次・週次のスケジュール表にドラッグ・アンド・ドロップするだけで訪問計画を立てられる。訪問実績の入力も簡単にできるよう、店舗名は自動的に表示され、売り場(「デジタルカメラ」「電子辞書」など)、作業内容(「売り場作り」「製品説明」など)、状況(「開始」、「完了」など)の選択肢を次々とクリックする操作のみで行えるようにした。

 これら訪問計画関連の入力や日報登録、交通費精算までを1日10分以内で完了できるようにした。マウス操作だけでこれらの作業を完了できるように、ページの切り替え回数を減らせるAjaxなどの技術を採用した。従来の日報入力システムは訪問先や業務内容などを文字で入力させる仕様だったが、入力に時間がかかるうえ、文字情報は分析して生かすのが難しいため見直した。

 C-Activeには販促施策の実行状況などを本社スタッフが把握できるよう、店頭の様子を画像で登録する機能も備えた。例えばデジタルカメラ製品「EXILIM」の販促では、店頭に小型テレビを置いて、「超高速連写」機能をアピールする動画を放映している。ただし、店頭の状況や店長の方針などによってはこの展示の了解を得られないことがある。C-Activeを活用し、カシオの営業マネジャーなどは、実際にこの陳列方法がどの程度浸透しているかを確認していく方針だ。

既存システムを部品化する手法が新システム導入のコスト抑制に寄与

訪問計画の画面
カシオ計算機が開発した訪問計画の画面
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 C-Activeのために当初はSFA(セールス・フォース・オートメーション)のパッケージ・ソフトを導入することも検討したが、コストや営業スタイルの将来的な変更に柔軟に対応できるかどうかを検討した結果、内製を選んだ。

 C-Activeはカシオ計算機にとって2007年から整備を始めたSOA(サービス指向アーキテクチャー)の考え方で構築したシステムの第1号だ(関連記事)。SOAにより「ウェブサービス(部品)」を介して、社内の多数の既存システムとの連動をスムーズに実現した。例えば、C-Activeに表示される営業担当者名や担当店舗などは既存の営業管理システムなどから引き出す仕組み。C-Activeに登録した訪問計画は、既存のグループウエアに自動的に反映される。

 サーバー機器やミドルウエアなどはほぼ以前から導入していたものを流用している。業務開発部(情報システム部門に相当)カスタマーサービスグループの原裕一グループリーダーは、「SOAに取り組んできたおかげで、C-Active導入に当たって、機器やITツールの新規購入はゼロに近い。経営環境が厳しい中で、2009年も新規のシステム開発を低コストで行えるのは強み」とSOAの長所を語る。

 C-Activeは稼働した後も、引き続き追加開発を行っていく。訪問実績と販売実績を照合して検証する機能や、営業担当者の在宅勤務を可能にする機能を加えることなどを予定している。

■変更履歴
既存のグループウエアとの連携についての記述を修正しました。 [2009/01/16 18:40]