ネット広告代理店大手、サイバーエージェントのファイナンス事業本部は2008年12月、名刺を起点にした案件管理システムを導入した。担当者は投資案件先への訪問から戻ると、受け取った名刺をスキャナで読み込ませて基本情報を登録し、訪問時に聞き出した様々な情報を入力する。このシステムを見れば訪問履歴や前回の印象などがすぐに分かるようになった。

 ファイナンス事業本部投資育成事業部では投資案件になり得る約3000件の企業を管理している。この案件情報に名刺から取り込んだ情報を加えることで、ほかの担当者が登録した名刺情報を共有できるようになった。システムには三三(東京・千代田区)のLink Knowledgeを採用した。

 情報の共有によってサイバーエージェントは2つの効果を狙っている。1つは名刺情報を蓄積することで訪問先のキーマンが誰なのかを判断し、効率的に交渉を進めることだ。案件管理システムには名刺情報を基に訪問先の組織図を推定して作成する機能があり、「名刺情報を見れば案件先との交渉のおおよその進ちょく状況が分かる」(投資育成事業部の辻岡義立シニアマネージャー)という。

 もう1つは登録した企業が発表した新技術や新サービスを漏らさずチェックすることである。案件管理システムのトップ画面には、名刺を登録した企業のニュースリリースや人事情報が表示される。こうした情報を常時更新することで、対象企業の変化に対応する。

 投資育成事業部は設立してから4年目で、これまでは新規案件を探すことに注力してきた。だが、「インターネット関連企業は技術の進歩が早く、時期が変われば投資案件になり得る場合もある。過去に接触した企業をもう一度調査することが増えてきた」(辻岡シニアマネージャー)という。再度調査する際に前回と同じ担当者が実施するとは限らない。これまでは担当者ごとに名刺情報を管理していたため、訪問に必要な情報をそろえるのに時間がかかった。案件情報と名刺情報を組み合わせて一元管理することで、別の担当者が再調査する際に手間が省けるようになった。サイバーエージェントは案件システムの効果をみながらほかの部門への導入も検討する。