(1)信頼性の確保を目指してダーク・ファイバを全国規模で採用
(2)通信事業者に依頼して独自のIP-VPN網を用意
(3)データ・センターも設備や回線の2重化を徹底
連結売上高は5兆円超,傘下のグループ企業数は94社以上という流通・小売業界の最大手,セブン&アイ・ホールディングス。同社は,業界の枠を超えてもなお他に類を見ない独自のネットワーク・インフラを運用している。
同社のネットワーク最大の特徴は,全国1万2000店を超すコンビニエンスストア・チェーンのセブン-イレブン店舗を中心として,イトーヨーカドーやデニーズなどグループの各店舗にダーク・ファイバを引き込み,同社グループ専用のバックボーン・ネットワークで結んだ点である。
このインフラを駆使し,セブン&アイ・グループ全体で経営効率の向上を図るべく,業務システムをできる限り統合した。2007年からはそごう・西武百貨店のミレニアム・グループのシステム統合も進めている。
バックボーンは専用IP-VPN
同社のネットワークは,専用のIP-VPN網とダーク・ファイバを組み合わせた完全オーダーメイドの光IPネットワークである(図1)。専用のIP-VPN網と言っても自営のネットワークではなく,NTTコミュニケーションズ(NTTコム)が通常のIP-VPNサービスとは切り離した網を作ってセブン&アイ専用に提供する通信サービスだ。
構築を始めたのは2004年11月。セブン-イレブン・ジャパンの店舗ネットワーク用として設計し,それをグループ全体に展開した。
セブン-イレブンが目指したのは,業務データのやり取りはもちろん,銀行ATM(現金自動預け払い機)のトランザクション,マルチメディア・コンテンツ配信といった,様々な店舗サービスのためのトラフィックを相乗りさせられる安定したネットワークを作ることだった。
コンビニエンスストアにとって,本部と店舗を結ぶネットワークは事業のカギを握る生命線である。売れ筋の商品を欠品なく揃え,死に筋の商品を廃するためには,本部から送られてくる販売政策情報をきちんと受け取り,適切なタイミングで商品を発注するためのネットワークが欠かせない。
最近はさらに,銀行ATM,電子マネーの「nanaco」,マルチコピー機からのチケット発行という具合に様々なサービスを提供している。どれ一つとってもセンターとの通信が前提であり,店舗ネットワークがサービス全体の品質を左右する。そこで構築したのが,各種のサービスを統合できるだけの強じんさを備える光IPネットワークだった。