高額のベッドを専門に製造・販売するシモンズ(東京・港)の業績が好調だ。2000年代に入って、国内の高級ホテルに相次いで導入され、人気に火が付いた。「理想的な眠り」にはお金を惜しまない団塊世代の富裕層を中心に支持が拡大。中国製の輸入商品が幅を利かす家具業界で、逆にアジアへの輸出も活況を呈す。急激な需要増はTPM(全員参加の生産保全)活動による生産性向上で乗り切る。

 「当社のベッドを採用していることが高級ホテルの宣伝文句になるとは、10年前には想像もできませんでしたよ」

 そう言って、シモンズの伊藤正文社長は顔をほころばせる。縮小が続く国内の家具市場において、中国で生産した低価格商品の投入で独り気を吐くニトリとは対照的に、メード・イン・ジャパンの高級路線でシモンズは成長中だ。国内では開業ラッシュが続く外資系高級ホテルと、彼らを迎え撃つ老舗ホテルが激しいバトルを繰り広げているが、どちらの陣営も競うようにシモンズのベッドを導入している。同社のマットレスは、特殊な布で一つひとつ独立したスプリングを包む「ポケットコイル」が特徴で、横になった時に体圧を分散させて理想的な寝姿勢を保てるように設計されている。

 マンダリンオリエンタル東京やザ・ペニンシュラ東京、コンラッド東京などが次々とシモンズのベッドを設置したかと思えば、帝国ホテル東京なども採用。高級ホテルの実績が呼び水となり、一般消費者にも「宿泊のプロが認めた高品質のベッド」というブランドイメージが浸透し始めた。

 今や高級ベッドの代名詞になったシモンズだが、1990年代までは同社の名前を知る人はほとんどいなかった。もともとシモンズは米国に本社がある1870年創業のベッドメーカーで、日本には1964年にシモンズ・東京ベッド製造として進出、国内生産を開始している。それ以来、高級ベッド一筋で40年以上の歴史を持つが、数年前までは一部の人だけが注目する、知る人ぞ知るブランドだった。

 日本法人は1987年に米シモンズから資本的に独立。アジア23カ国でのベッド販売権も獲得した。そして96年からは自動車部品メーカーのニフコの傘下に入る。自動車部品と高級ベッドという異色の取り合わせだが、ニフコの小野寺優代表取締役社長は2008年6月までシモンズの社長を務めていたほどで、グループ内の結び付きは思いのほか強い。

●シモンズの会社概要
●シモンズの会社概要