主婦が買いたくなる施策を実施

 SBLで分類した「7つの購買行動」で目立つのが食事関連の比率の大きさ。「外食(平日の朝や昼に家の外で食べる)時の食事やスナック」「今晩の食事」といった食事関連が4割を占める。多くの消費者は「食事を意識して飲み物を買う」ことが確認された。

 C&Mを担当したSM/DRUGプランニンググループの小松周治プランニングマネジャーは「改めて家庭内消費に力を入れなければならないと分かった」と話す。SBLに先立ちコーラで実施していたCBLの調査でも「炭酸飲料は遊んでいる時や勉強している時より食事時に飲む」という調査結果を得ていた。そこで、冒頭のようなクロスマーチャンダイジングに「食品メーカーとのタイアップとしてはこれまでにないぐらいの大きな規模」(小松氏)で取り組み始めた。

 例えば、今年2月のテーマは「子供の受験」。「あったかメニューとコカ・コーラの刺激で受験生を応援」というメッセージを込めて、1.5ℓペットボトルのコカ・コーラに日清食品の「チキンラーメン」の小型版を添付した。花見シーズンの4月はミツカンの「おむすび山」2袋。5月は「スタミナ料理とコカ・コーラの刺激で5月病を吹き飛ばせ」としてキッコーマンの焼肉のたれ「わが家は焼肉屋さん」を付けた。協力したのはいずれも知名度のある企業。コカ・コーラ側の熱意と戦略性を理解したのだろう。

 ウェブサイトでは料理レシピを公開し、テレビCMでは家族の食卓を流した。「キャンペーンを開始してからちょうど半年になるが、18歳未満の子供がいる家庭での飲用量が増加した」と小松氏はキャンペーン効果に自信を深めている。

新しい什器で売り場を開拓する「ぷるんぷるんQoo」(左)と「父の日」キャンペーンを展開した「ジョージア」マルチパック(右)
新しい什器で売り場を開拓する「ぷるんぷるんQoo」(左)と「父の日」キャンペーンを展開した「ジョージア」マルチパック(右)

地方スーパーで前年同期比10~12%増

 こうした販促は、同グループの販社であるボトラー各社と小売店が乗り気にならなければ成功しない。販売現場はC&Mをどのように受け止めたのだろうか。

 岩手県のスーパー・マルイチ(盛岡市)。盛岡城跡にほど近い中ノ橋通店の下田靖行次長は昨年12月、マルイチを担当するみちのくコカ・コーラボトリング(岩手県矢巾町)の営業担当者からC&Mについて初めて耳にした。

 下田次長も飲料と食品のクロスマーチャンダイジングの難しさを知っている。それでも、みちのくコカ岩手県本部の佐藤英之アカウントマネジャーの熱心さにほだされて「メーカーの本気に応えるのは小売りの義務。安売りを仕掛ける近隣の競合に対抗できる手段かもしれない」と腹をくくった。ただし当初、関連する各売り場担当のチーフは懐疑的だった。佐藤マネジャーは下田次長とともにチーフに会い説得を重ねた。

 その結果、今年6月5日現在、同店では飲料売り場以外にも食肉売り場や野菜売り場、レジ近くの特設売り場など合計5ヵ所でコカ・コーラを販売している。肉や野菜と並べて売ったのは、この月のタイアップメニューがカレーだからだ。コカ・コーラのボトルにはハウス食品のルーが付いている。

 マルイチ中ノ橋通店でのコカ・コーラの売り上げは前年同期比10~12%で推移している。タイアップした食品メーカーの商品も数%増という。

みちのくコカ・コーラボトリング岩手県本部の佐藤英之氏(左)とマルイチ中ノ橋通店の下田靖行次長(右)
みちのくコカ・コーラボトリング岩手県本部の佐藤英之氏(左)とマルイチ中ノ橋通店の下田靖行次長(右)