現金入出金機や両替機などを製造するグローリーは、日米の拠点における保守部品の在庫最適化に取り組んでいる。2007年11月に在庫管理システムを導入し、2008年10月に新センターを稼働させるなど保守部品の供給体制を整えてきた。こうした体制によって2009年度には国内で10%、米国で20%、在庫を削減する見込みである。在庫管理システムはサービジスティクスアジア(東京・港区)の「Service Parts Management」を採用した。

 同社は金融機関の顧客に障害が発生した場合、あらかじめ設定した時間以内に回復することを契約に盛り込んでいることが多い。そのため全国約100カ所の営業所が、各営業所の判断によって必要な部品を発注していた。これら営業拠点の在庫量は棚卸しの際にしか分からないなど、本社がコントロールできる仕組みがなかった。執行役員で保守事業統括部兼CES統括部の新田誠二部長は「どの部品が過剰で、どの部品が足りないのかが分からなかった」と振り返る。営業所間で在庫を融通し合うなどの対応はしていたものの、各営業所に発注権限を与えていたことが在庫過多になる根本原因となっていた。

 そこで、2007年11月に新システムを導入するとともに、在庫管理を専門に担当する部署を設置した。2008年10月には兵庫県姫路市にパーツセンターを開設したのに続き、2009年4月までにデリバリーポイントと呼ぶ中間配送拠点を10カ所に設置する。すでに1年間で在庫を6%削減し、来年度は10%の削減を見込んでいる。

 新システムを導入することで、総在庫がリアルタイムでつかめるようになった。末端の営業所における補修部品の在庫量や売り上げなどがリアルタイムで分かる。このシステムとデリバリーポイントを設置することで、各営業所には必要最小限の在庫だけを置く。姫路市のパーツセンターに、外装などほとんど出荷がない部品を中心に約20万品目を配備し、デリバリーポイントには定期点検に使用する約5000種類の保守部品を置くようにした。

 さらに来年度からはパーツセンターと各デリバリーポイント間に自動発注方式を導入する。各部品に安全在庫を設定して、在庫数が下回ればパーツセンターに発注するといった具合に変更する。「在庫をより最適化するために自動発注に切り替えたい」と新田部長は話す。

 並行して、米国でも同様の在庫削減に取り組んでいる。同様のシステムを導入したことで、米国の倉庫内の在庫状況や必要量も把握できるようになった。米国は船便を利用していたこともあり、部品供給に発注から最大3カ月かかることもあった。「日本以上に欠品を恐れて在庫を抱えようとしていた」(新田部長)という。

 2009年度に米国でも20%の在庫を削減するために、11月からシステムを改良した。米国では営業拠点内で在庫管理するのではなく、サービス担当者がそれぞれ使用する車内に補修部品を積んで管理していた。各サービス担当者には一律5000ドル分の保守部品を配布していたが、使用状況に応じて差をつけることにした。使用頻度が少ない担当者については配布する部品点数を減らし減額するといった具合である。こうした取組みによって、在庫の20%削減という目標の達成を目指す。