PASMOを使って、東急線の駅の自動改札機を通過する子供の姿。この瞬間に、親には改札通過を知らせる電子メールが届く
PASMOを使って、東急線の駅の自動改札機を通過する子供の姿。この瞬間に、親には改札通過を知らせる電子メールが届く
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 東急セキュリティ(東京・渋谷区)が2007年12月に始めた駅改札通過情報配信サービス「キッズセキュリティ・駅(エキッズ)」の利用者が、開始から1年が経過する2008年末までに2500人を超える見込みだ。2009年末には倍増を目指し、5000人の獲得を目標としている。

 エキッズとは、子供がPASMO(パスモ)カードを使って東急線の駅の自動改札機を通過すると、親の携帯電話に子供の駅通過情報が電子メールで届くサービスのことである。子供が自動改札機にPASMOをタッチしたタイミングで、「11月27日 8時30分、太郎君、東急電鉄・二子玉川駅を入場(出場)されました」といった内容のメッセージが親に配信される。

 世田谷線を除く東急線全駅がサービスの対象となっており、小学生と中学生が利用できる。料金は6カ月ごとの契約で子供1人当たり3150円(月額換算で525円)。東急線の電車に乗って学校や塾、習い事に通う子供の親が、「うちの子は無事に目的地に着いたかな?」「そろそろ家に帰ってくるころかな?」という不安を解消するために利用している。東急線沿線に立地するある私立小学校では子供の半数が利用するようになるなど、地元では口コミで着実に浸透しつつある。

使い始めると手放せなくなる

 利用している親たちからは「エキッズを一度使い始めると手放せなくなる」という声が数多く寄せられているという。特に娘を持つ親からは好評で、子供が中学校を卒業した後、「高校生になってもエキッズを引き続き利用させたい」という声が既に寄せられている。そうした要望に東急セキュリティは個別に対応している。

 エキッズをしばらく使っていると、毎日同じ時間帯に携帯電話にメールが届くのが「習慣」になるので、「子供が駅の改札を通過する時間に、メールの着信を知らせる携帯電話のバイブレーション機能が震え出すと、それで1日安心して過ごせるようになった」という感想を漏らす親もいるほどだ。逆に、決まった時間にメールが届かないと、「子供に何かあったのかもしれない」と思って、そこで素早くアクションを起こせる。

 最近は子供に携帯電話を持たせる親も増えているが、毎日学校や塾に着くたびに、親に電話をしてくるように言っても、子供がそうするとは限らない。第一、子供がどこから電話をかけてきているのかは特定できないし、子供が親に嘘をつくこともあり得る。

 その点、エキッズは駅の自動改札機のリアルタイムな通過情報なので、「居場所がはっきりしているし、子供のほうも特に意識せずに親に安否を知らせられる」(熊田陽一郎・営業本部商品企画開発部PASMOソリューション担当課長)。子供本人が「今、着いたよ」と書いてくるメールの着信を待つよりも、通過情報は時間が正確なので、「最寄り駅まで子供を迎えに行く時間を計算しやすくなった」と話す親もいる。

 帰宅が遅い働く親の中にはエキッズを使うようになって初めて、「子供が部活動のある日には何時に帰宅し、逆に部活動がない日は何時に帰宅しているのかを正確に把握できるようになった」と打ち明ける人もいる。また別の親は「今日は塾の授業が早く終わったのかな」「今日は授業が長引いているのかな」と、通過情報のメールを見ながら子供の姿を想像したりしているという。