福助は女性誌の人気モデルである蛯原友里さん(エビちゃん)や全日本航空(ANA)の客室乗務員らと一緒に新製品「f-ing BIZ WALK(エフィング ビズウォーク)」を企画
福助は女性誌の人気モデルである蛯原友里さん(エビちゃん)や全日本航空(ANA)の客室乗務員らと一緒に新製品「f-ing BIZ WALK(エフィング ビズウォーク)」を企画
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 ストッキングや靴下を製造・販売する福助(東京・渋谷区)は10月、新製品「f-ing BIZ WALK(エフィング ビズウォーク)」を発売した。2006年2月に立ち上げたブランド「エフィング」はこれで計6つのサブブランドから成る総合レッグウェアブランドとなった。2007年1月期に8億8000万円だった同ブランドの年商は2009年1月期、40億円に達する見通しだ。1990年代半ばから縮小傾向にある国内ストッキング市場を尻目に、福助の看板ブランドの1つに成長した。

 エフィングは、ストッキングをはく習慣がない現在の20代女性、つまり「ナマ脚世代」をターゲットとしたブランドである。2006年12月に枚数限定で先行発売したストッキング製品「f-ing MOTESTO(エフィング モテスト)」の販売面での成功によって、成長に弾みがついた経緯を持つ。

 モテストは、女性誌の人気モデルであるエビちゃん(蛯原友里さん)と、もえちゃん(押切もえさん)とのコラボレーション(協働)で企画・開発した製品だ。福助はその後、2007年2月にもえちゃんと協働した着圧ソックス製品「f-ing CUTEFIT(エフィング キューフィット)」を、2007年秋に再びエビちゃん・もえちゃんと協働したストッキング製品「f-ing KOKOZO(エフィング ココゾ)」を発売した。また、モテストは2008年春夏モデルからレギンス製品を追加している。

 エビちゃん・もえちゃんと言えば、彼女たちと同世代である20代半ばから後半の女性からの支持が高く、ファッションをまねしてみたいと思う人が多い。つまり、2人は福助が想定したエフィングの“ターゲット顧客の代表”と見ることができる。ストッキングをはく習慣すらない「ナマ脚世代」に同社ストッキングの機能性の高さをアピールしても響かないと判断した吉野哲社長は、「ストッキングをはくことはおしゃれ」とナマ脚世代に感じさせることが重要だと考えたのである。

単なる“広告塔”ではない

 外部との協働作業によるエフィングの成長は福助にビジネスの好循環をもたらしている。「今では『新企画を積極的に仕掛ける会社』という評判が広がり、いろいろ声がかかったり声をかけやすくなったりした」と吉野社長は明かす。その最新の代表例がビズウォークである。エビちゃんに加えて、全日本空輸(ANA)の客室乗務員、TBSの情報番組「王様のブランチ」と協働したのだ。

 ビズウォークのターゲット層は仕事でストッキングをはかざるを得ない女性で、おしゃれと機能を両立させたい人。だから、ストッキングをはいて格好良く働く女性のイメージが強い客室乗務員に話を持ちかけた。今回は客室乗務員も“顧客代表”なのだ。「客室乗務員さんからは特に使い勝手や価格、パッケージへの意見をたくさんもらった。エビちゃんはデザインへのこだわりが強く、刺激を受けた」と、岡田好孝マーケティング本部部長は語る。
 
 この言葉からも分かるように、エビちゃんやもえちゃんは単なる“広告塔”ではない。例えばモテストの開発時は2人が参加する会議を十数回開き、毎回2~3時間を費やした。2人は自宅で何度もデザインを描き、試作品を持ち帰ってはき心地を試してもくれた。自分たちがはきたいもの、つまり、ターゲット顧客が望むものを突き詰めてくれたのだ(関連記事)。

 吉野社長はエフィングブランドの隠れた成功要因として、「競合を気にし過ぎずに、顧客起点で『次は何が欲しいか』を考え、独創性を追求する姿勢を社員が持ち続けてくれたこと」を挙げる。独創性を重視する社風だからこそ、社外の人気モデルの斬新で瑞々しいアイデアをうまく消化できた。福助本社では約200人の社員がワンフロアで働き、部署を越えて日々議論を交わしているという。