「アイディアカー」の車内。助手席側に傘立ての機能を持たせた
「アイディアカー」の車内。助手席側に傘立ての機能を持たせた
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 自動車向けプラスチック工業用ファスナー製造の大手であるニフコが需要開拓に向けてユニークな活動を行っている。傘立てなどのアイデア商品を33種類盛り込んだ小型車「アイディアカー」を、自動車メーカーの協力を得て2008年5月に試験的に開発。この自動車を国内外の取引先に披露して回り、意見交換や販促のツールとして役立てているのだ。

 ニフコはカップホルダーなど車内空間の利便性を高めるアイデア商品の開発を得意とし、実際に自動車メーカーに多数納入している。今後、中長期的な原油価格の上昇や新興国の小型車の普及をにらんで「小型車の市場へ先手を打って攻め込む」(能登谷良明・専務取締役グローバル事業本部営業・技術担当本部長)ため、今回の取り組みに着手した。

 小型車は価格やスペースの制約から、こうしたアイデア商品の搭載が削られやすい。ニフコは厳しさを認識しながらも、「たとえ小型車でも、エンドユーザーである消費者の困りごとを解決するアイデアであれば、取引先も受け入れてくれるはず」(能登谷専務)と前向きに考えている。小型車向けに開発できた商品は、ほぼそのまま大型車にも流用できる。そこでアイデア商品を盛り込んだ小型車を開発することにした。

天井にレールを設置。ネットを取り付けて荷物などをかけられる
天井にレールを設置。ネットを取り付けて荷物などをかけられる
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 実際に、利用できるスペースが限られる小型車を想定して知恵を絞ったことで、これまでにない発想がいくつも生まれたという。例えば、車内の天井に注目したのは今回が初めて。「天井にレールを設け、ネットなどを取り付けて荷物をかけられるようにする」というアイデアが生まれた。

 小型車の主要な顧客を想定して搭載したアイデア商品もある。後部座席下部のすき間を生かした小物入れだ。小さな子供を後部座席に乗せる若い母親を想定し、子供向けの玩具などを常備できるスペースとした。このように車内のデッドスペースを隅々まで活用して、33個のアイデアを盛り込んだ。

 今後は利便性向上だけでなく、得意のプラスチック技術を生かして車体の軽量化に貢献するアイデアにも同様に取り組んでいくという。