カメラ販売や写真プリント大手のキタムラが2007年に掲げたネット事業の戦略目標「5つの100万人作戦」が、当初の計画よりも早く進行している。5つの100万人作戦とは、2010年3月をメドにキタムラグループ全体で、(1)1日当たりのホームページ訪問者数、(2)ネット会員数、(3)メールマガジン会員数、(4)ケータイ会員数、(5)1カ月当たりの店舗ブログ訪問者数で、それぞれ100万人を突破しようというものだ。

 これまで紙のチラシに頼ってきた顧客への情報提供や販促をネットに移行するため、キタムラは2007年にグループを挙げてインターネットと携帯電話の利用を推進すると宣言した。同時に100万人という数値目標を掲げ、2008年の年初からネット顧客の獲得に奔走してきた。

 その結果、(2)ネット会員数は2008年3月、(5)1カ月当たりの店舗ブログ訪問者数は2008年7月に、それぞれ100万人を超えた。今の増加ペースでいけば、(4)ケータイ会員数も2008年11月末までに100万人を超える見通し。2010年を待たずして、2008年中には目標のうち3つで100万人を達成することになる。

 年内に100万人を超える3つは、この1年での人数の伸びが著しい。2008年9月末時点で、(2)ネット会員数は前年比148.3%の127万人、(5)1カ月当たりの店舗ブログ訪問者数は前年比415.9%の184万人だ。(4)ケータイ会員数に至っては、前年比708.3%の86万人と急激に伸びている。

店舗ブログやメルマガで再来店を促す

 中でも特徴的なのは、2005年に全店で開始した店舗ブログ。1カ月に最低5回は更新する店舗ブログを通じて、地域の顧客に向けて地元の店舗の情報を提供していく。キタムラグループは1200店の店長に対し、「店舗ブログを有効な販促手段と考えて、積極的に取り組むように」と通達。店舗ブログ作成の研修用に作ったDVDを全店に配布して利用を促すなど、チラシを店舗ブログに置き換える活動に力を入れている。

 ただし、チラシを完全に否定するわけではない。「初めてのお客様に来店を促すツールとしては依然としてチラシが有効だが、一度来ていただいたお客様に再来店を促すツールとしては、店舗ブログやメールマガジンを活用していく。そのためにも、初回来店時にネット会員やケータイ会員への登録を推奨する。それが結果的に5つの100万人の達成を後押しすると考えている」と、キタムラグループでネット事業を担当するトランスフォーメーション(東京都港区)の大滝敏司代表取締役社長は話す。

 今後の強化ポイントは目標未達である(1)1日当たりのホームページ訪問者数(18万人)と、(3)メールマガジン会員数(57万人)となる。2010年までに達成できれば「公約」をすべて果たしたことになる。

 キタムラグループはネットで獲得した顧客に対して、地域に密着したタイムリーな情報提供を心がけることで、年間のチラシ代を3億~5億円ほど削減しつつも、一方で売り上げ増を狙う。5つの100万人作戦とは別に、2008年度からの3カ年計画で「3つの大作戦」を掲げており、「フォトブック300億円」「年賀状1億枚」「デジカメ日本一(販売台数150万台)」を目指して、顧客をこれら3つに誘導していく。

 特に、顧客がデジカメで撮影した画像を写真集のように1冊の本にまとめられるサービスであるフォトブックは、2008年度を立ち上がりの元年にしたい考えで、既に欧米では浸透しつつあるフォトブックをネット利用者にアピールしている。2008年8月に新たに開始した、携帯電話で撮影した画像をフォトブックにできるサービス「Chu-Me(チューミー)」も出足は好調で、開始2カ月で登録者数は9000人に達した。赤ちゃんの成長記録としてケータイ写真を毎日撮りためている子育てママをターゲットに据えて、携帯電話だけでフォトブックを作成・注文できる手軽さを売り物に顧客獲得を推し進める。