日本銀行は10月14日、銀行や証券会社など金融機関同士の資金決済を処理する「日銀ネット」に、決済のリスク削減と効率向上につながる新機能を追加した。日銀ネットは1日に約135兆円の資金を取り扱う決済インフラである。

 新機能のうち決済リスクを減らす機能は、外国為替に関する円の取引におけるリアルタイム決済。いわゆる「RTGS(即時グロス決済)」の採用だ。これまでは1日1回まとめて決済していたため、支払依頼を出した金融機関が破綻して決済ができなくなった際の影響が広範囲に及ぶというリスクがあった。

 決済効率の向上は、既にRTGSを利用している日銀当座預金決済などを対象にした「流動性節約機能」の導入で実現した。具体的には二つの仕組みを搭載した。一つは、支払いを依頼した金融機関の口座が資金不足で直ちに決済ができないときに、支払依頼を日銀ネット内に待機させておく機能。もう一つが、複数の支払依頼をリアルタイムに組み合わせて決済を実行する機能である。

 これら二つの機能によって、「決済のたびに支払額を上回る資金や担保を用意しなければならないというRTGSの問題点を解決した」(決済機構局の奥野聡雄企画役)。流動性節約機能は、都市銀行や地方銀行、信託銀行、信用金庫、証券会社など292の金融機関が利用する。

 日銀ネットのシステム開発はNTTデータが担当しており、今回の機能強化も同社が手がけた。動作プラットフォームには日本IBM製メインフレームなどを使っている。機能強化に伴う投資額は15億円強。

 今後は2011年をメドに、内国為替を処理する全国銀行データ通信システム(全銀システム)と日銀ネットをリアルタイムでつなぎ、1億円以上の内国為替をRTGSで決済できるようにする計画だ。