日立建機の水津和久・調達本部土浦調達部長
(写真撮影:吉田 明弘)

 建設機械国内2位の日立建機・土浦工場が部品調達の安定性を高めるために実施した改革が成果を上げている。2007年から5万8000点の部品ごとに約3年先までの調達計画を取引先の部品メーカーに開示し始めた。約4カ月に1回の頻度で更新している。部品メーカーはこの情報を見て生産設備への投資などの判断材料に活用。これが、調達および生産の安定化や部品調達コスト上昇の抑制につながり、2008年3月期の最高益達成に貢献した。同社は連結ベースで5期連続の最高益を達成している。

 この数年、新興国などからの需要が急増するなかで大きな課題になってきたのが、部品を安定的に調達できるかどうかだった。従来から、建機メーカー各社は部品メーカーに調達計画を前倒しで開示することに取り組んでいるが、従来の業界の常識では、製品モデル別で6カ月先までが一般的だった。

 だが部品メーカーからすれば、問題が2つあった。まず、モデル別の調達計画を開示されても、部品単位でどの程度増えるかを把握しにくいことだ。

 また、土地バブル崩壊後に建機メーカーが取引先の選別などのリストラを断行した経緯から、建機メーカーから増産要請を受けても、設備投資せずに人海戦術で乗り切ろうとする部品メーカーが少なくなかった。

 こうした対応では早晩に限界が訪れ、調達コストにも跳ね返ると日立建機は判断。約1年の準備期間を経て、部品単位の調達計画情報の公開に踏み切った。土浦工場が製造する全モデルの製造用と、販売後の保守用の部品それぞれについて3カ年分の調達計画を開示し、ほぼ4カ月おきに更新している。取引先にアンケートしたところ「『従来のモデル別の情報で十分』と回答したのは11%だけ。89%の取引先は、『投資計画を立てやすくなった』などと評価している」(調達本部土浦調達部の水津和久部長)。

 一方で、取引先からは部品の生産に必要な人員数や設備の強化策とその実行計画を提出してもらっている。実行計画の策定には日立建機の要員も積極的に加わり、計画を共有。こうしたコミュニケーションも部品調達の安定性を高めることに奏功している。