キヤノンマーケティングジャパン広報部の平林泰直広報第二グループ課長

 単なる上意下達にとどまらず業務改革を鼓舞する社内報と、システムや業務ルールの改善提案が集まるグループポータル・サイト。キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は2003年から5年がかりで紙とネットの社内メディアを強化してきた。M&A(合併・買収)や本社移転、社名変更を経てもなお「キヤノンらしさ」を継承し、社員の自発性を促す同社のインナーブランディングをこれらの社内メディアが支えている。(関連記事

 キヤノンMJがグループ社内報「キヤノンフロントライン」を創刊したのは2003年4月。製品ごとの事業部制からマーケット別カンパニー制への移行、従業員およそ1200人の住友金属システムソリューションズ(現キヤノンシステムソリューションズ)の買収、本社の東京都品川区への移転など、様々な転機をむかえた年であった。

 従来の社内報は、親会社であるキヤノンの「キヤノンライフ」を共有していた。もともと1983年までは採用は一括、人事制度は同一だった。その後も90年代まではキヤノン製品の物販中心の業態だったから社内報が共通なことには意味があった。しかし、10年ほど前に物販からネットワーク構築などのソリューションビジネスに軸足をシフトするにつれて、独自に深い情報を盛り込む必要が増した。これが2003年にキヤノンMJが独自の社内報作りに踏み切ったきっかけだ。8月を除いて年11回、1万8000部を発行している。

 ソリューションビジネスへの取り組み機運を高める狙いと併せて、キヤノンMJ本体よりも20以上あるグループ会社を優先的に取材・記事掲載する、という編集方針を打ち出した。新たなソリューション作りには、システム開発や営業、保守の連携といった機能横断的な取り組みが欠かせないだけに、グループ子会社を巻き込んで盛り上げる必要があるからだ。

 特集ページでは、物販からソリューションビジネスへと変わるなかで重要なスキルや働き方を取り扱っている。「フロントラインMVP」という連載は、こうした業務の進め方で優れた成績を残したチームや社員の取り組みをていねいに紹介している。いずれも登場する社員にはキヤノンMJ本体よりグループの社員が目立つ。

 特定のグループ会社に偏らず満遍なく取り上げられるように、特集なら2ポイント、ニュースなら1ポイントというようにグループ会社ごとの掲載回数をポイント換算して定量管理する工夫も講じている。広報部広報第二グループの平林泰直課長は「グループの一体感を高めつつ、新しい企業文化の醸成につなげる方針で編集している」と語る。