北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は2008年3月,全校舎をカバーする無線LANシステムの構築を完了させた。設置したアクセス・ポイント(AP)の数は約400台。そのすべてが米シスコの「Aironet」シリーズだ。約150台のAPは,IEEE 802.11nドラフト2.0対応である。残る約250台のAPは802.11a/b/g対応だが,今後,順次802.11n対応の製品に切り替えていく。

 今回のシステム構築によって,無線LAN機器の管理性の向上と,有線イーサネット並みの無線環境の提供が可能になった。

2000年から無線LANに取り組む

写真1●北陸先端科学技術大学院大学のネットワークを担当する情報科学センターの宇多仁助教
写真1●北陸先端科学技術大学院大学のネットワークを担当する情報科学センターの宇多仁助教

 JAISTが無線LANに取り組み始めたのは2000年から。当初は,現在の全校舎を覆うネットワークではなく,「3学科のうちの一つである情報科学研究科の要望に応じて,研究室ごとに徐々に導入していった」(同大学のネットワークを担当する情報科学センターの宇多仁助教,写真1)。

 2001年には,図書館にもエリアを拡大した。当時,教職員や学生たちからは「802.11bだったため通信速度は遅いものの,ケーブルをつながなくてもよいのは便利という評判だった」(宇多助教)。その後,従来のAPを802.11gに対応させる作業をしたが,「ビデオ会議など映像のやり取りはきつかった」(同氏)。

 無線LAN搭載のノート・パソコンが増える中で,他の研究科でも無線LAN導入の要求が高まっていった。2005年には知識科学研究科に無線LANが導入され,残る1学科を除いて,ほぼ全校舎に導入された。

APの増大で管理が困難に

 転機が訪れたのは2006年のことだ。無線LANの規模は2005年以降も拡大していき,2006年にはAPの数が150台を超えた。そこで顕在化してきたのが,APを集中管理できないという問題である。校内の無線LAN APのほとんどがコンシューマ向け製品だったため,トラブルが発生した場合,原因究明が難しかった。例えば,「無線LANネットワークにはつながるが,インターネットに接続できない問題が発生したとき,どこが悪いのかを調べるのに苦労した」(宇多助教)。

 そこで決断したのが,状態の把握/管理が可能なコントローラ型の無線LANシステムの導入である。シスコ製のほか,米アルバネットワークスや米メルー・ネットワークス製品も検討したが,既に知識科学研究科でシスコの製品を導入していたため,他の研究科でもシスコ製に統一した。