携帯活用で通信モジュールを撤廃

 同社はこれまで一部の地域で,通信モジュールを内蔵したカーナビを使い,カーナビのGPS機能によって隊員の位置情報を把握する取り組みを試行していた。ただ,隊員が持つ携帯電話に加えて,カーナビの通信モジュールの契約が必要になることによる通信コストの増大を懸念し,全国展開に踏み切れずにいた。今回のシステムは,この通信コストに対する課題を解決することも念頭に置いていた。

 新システムでは通信機能を携帯電話に一本化し,カーナビで取得した位置情報を携帯電話によって送信する仕組みを実現。「通信コストを抑えた形で,求めていたシステムを達成できた」と田中氏は語る。

実地試験で時間短縮効果を確認

 同社はシステムの有効性を確認するために,全国展開前の2007年1月から神奈川県川崎市で約120台の車両を用いて約1年間トライアルを実施した。この中で実際に現場への到達時間を,従来よりも約2分30秒短縮できることを確認した(図4)。

図4●新システム導入によって現場到達までの時間を約2分30秒短縮<br>隊員の選択や出動準備時間を自動化することによって,これまで人の手を介して行っていた作業を短縮できた。
図4●新システム導入によって現場到達までの時間を約2分30秒短縮
隊員の選択や出動準備時間を自動化することによって,これまで人の手を介して行っていた作業を短縮できた。
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 隊員の選択にかかわる時間は,自動化によって,業務無線や携帯電話で連絡していた従来と比べて約1分短縮できた。隊員が指示を受けてから実際に出動するまでの時間は,カーナビへの自動入力によって,これまで地図を確認したり,手入力でカーナビに情報を登録していた時と比べ,約1分30秒短縮できたという。

 「警備業法上は現場へ25分以内に到達することが求められている。社内ではそれを上回る20分以内に到着することを目標としており,1分,1秒を争う中でトータル2分30秒の短縮効果は大きい」と板橋課長代理は説明する。

 さらに,各隊員の位置情報を常に把握できるようになり,受け持ちエリア外からも隊員が駆けつけられるという効果も実感しているという。

 今回のシステムの初期導入コストは約2億円。携帯電話の契約については,位置情報を定期的に送信するため,パケット定額プランに加入した。「法人向けの最大割引の適用を受けて,料金的にも最適なシステムができた」(田中氏)という。

ここがポイント

目的:現場への到達時間の短縮

製品:KDDIの「E03CA」

導入期間:2008年1月から全国展開

効果:現場への到達時間を約2分30秒短縮。
通信機能の一本化によりコストを抑制

●会社プロフィール
本社: 東京都港区
売上高: 2849億9600万円(連結,2008年3月期)
従業員数: 2万6014人(連結,2008年3月31日時点)

●ネットワーク・プロフィール
KDDIの携帯電話を使って,隊員の位置を定期的に把握。